ニッケイ新聞 2013年5月3日
1月初旬に世界一周航海「QUELLE2013」に出発した海洋研究開発機構の有人潜水調査船「しんかい6500」が、先月23日にブラジル沖に到着、処女地となる同海域の初潜航を開始した。
潜水船を母船「よこすか」に乗せ、インド洋から南大西洋、カリブ海、南太平洋を1年かけて巡る調査の旅。極限的な環境を生きる生命の生き残り戦略を探る。
ブラジル沖では、切り立つ崖が東西数百キロメートルにわたって続くサンパウロ海嶺や、高さ5キロメートルを超える巨大海山、リオグランデ海膨を調査。ブラジル地質調査所とサンパウロ大学海洋研究所と共同で作業にあたっている。
世界でまだ二例しかないという、化学合成生物群集(地球内部から湧き出る化学物質をエネルギー源とする生物)や新生物発見への期待も大きい。
現段階では多数の堆積物や岩石のサンプルが採取されたほか、推定数百万年と見られる鯨の上顎骨らしき化石が見つかっている。
また調査チームの一員には、サンパウロ大学海洋研究所で博士号を取得した日本大学生物資源科学部の荒功一准教授もおり、ポ語を活かして両国メンバーのつなぎ役を担っている。
ブラジル沖の調査は約2カ月間続けられる予定。調査の様子はサイト(www.jamstec.go.jp/quelle2013)で確認できる。