ニッケイ新聞 2013年5月4日
【クリチーバ発=田中詩穂記者】昨年末に落成したパラナ州都クリチーバ市の日本移民百周年記念公園。しかし、いまだに一般開放されていないことがニッケイ新聞の取材で分かった。郊外とはいえ、州都に52万平米もの広大な総敷地面積を有し、同州百周年記念事業の中でも目玉事業といえるものだった。その公園を今後どのように活用するかをめぐり、地元の関係者が検討を重ねている。4月25日に現地を訪れ、関係者に現状と今後の展望を聞いてみた。
公園はサンジョゼ・ド・ピニャイス市との境近く、ウベラーバ区イグアス環境保護地内にある。早川ルイス氏の設計で、上から見たら扇形に見えるガラス張りのモニュメントが目を引く。
周囲には芝生と花、見渡す限り池が広がっており、噴水も造られている。広大だが、それでも総面積の3分の1程度しか使っていないという。
総工費は市と連邦政府が分担。市の予算350万レを投資し、昨年末の段階で「落成式」を行った。市の担当者によれば「完成度は85〜90%」と言うものの、実はまだ一般開放しておらず、その目処すら立っていないのが現状だ。
というのも、昨年10月の選挙で同公園を計画造成した市の政権党が敗退したため、それまで尽力した市長への感謝の意味で暫定的な「落成式」を行ったためだ。現在はは連邦政府からの予算解禁を待っている状態で、完成までにはまだまだ時間を要しそうだ。
「日本移民を象徴するものを設置したい」と語るのは、同文協元会長で公園造成事業発案者の山脇譲二氏(71、三世)だ。市の担当者によれば4種の桜の苗をすでに300本分植えており、今後さらに日本庭園、先駆者の名前を刻んだ道の造成などを構想している。
しかし、市政権党がライバル政党に変わったこともあり、着工当初から携わっていた建設業者が報酬未払いを理由に撤退したため、今年初めから工事は止まってしまった。そのため次の業者は未定で、それに伴う入札もこれからだ。
公園の土地は、もともとファベーラ住民が占拠していた地区で、彼らを移転させると同時に、集中豪雨時の貯水池としての機能を持たせる目的があった。沼地埋め立て作業に時間を要し、07年の着工から落成まで5年かかったが、さらに時間がかかる見込みだ。
山脇氏は「クリチーバ市の日系人口はたった1%。にも関わらず市はこれだけのものを作ってくれた。それだけでも感謝している」と強調し、「今後はコロニアからもいろいろ提案して良い使い方を考えていきたい」と前向きに話した。
環境に配慮した公園に=日本企業に支援呼びかけ
市や日系社会ら地元関係者は、ただの公園として開放するのでなく、環境先進都市クリチーバならではの市民の環境保護意識を高める場所にしたいと望んでおり、新エネルギー技術などを有する日本企業の参加を期待している。
「省エネとかスマートコミュニティ(環境配慮型都市)とか、環境にやさしい技術を開発する日本の企業のショールームやパビリオン設置を」とパラナ日伯商工会議所の大城義明会頭(71、二世)は考えている。
「進んだ発電技術や下水処理、ゴミ処理などの技術を持つ日本企業が進出したがっているとの話を聞く。こういった企業と市の仲介役をしてビジネスに結び付けたい」と意気込み、「周囲に広がるファべーラの子供たちに対して、日本文化を通じて教育を行う」という案も披露した。