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観光赤字3年で3倍に=国外旅行ブームの影で=コスト高嫌われるブラジル旅行

ニッケイ新聞 2013年5月7日

 ブラジル人の国外での消費の増加の一方で、国外からブラジルへの観光客の伸び悩みが重なり、観光収支の赤字がこの4年で3倍に膨れ上がっていることがわかった。5日付フォーリャ紙が報じている。
 国外からの旅行者がブラジルで支出する額は、2008年の58億米ドルから12年は66億米ドルへと、15%ほどの伸びは示している。
 だが、ブラジルから国外への旅行者の旅行地での支出の伸びはそれを大きく上回り、2008年は51億8千万ドルだった観光収支の赤字は、12年には155億9千万ドルと3倍に膨れ上がっていることがわかった。
 ここ数年の経済成長にともなう所得向上やレアル高が火をつけた国外旅行ブームとブラジル人旅行者の気前の良い支出は米国などでも話題となり、それがブラジルから米国への旅行時のビザ廃止を求める声の高まりにもつながっているが、国外旅行者の増加の理由には国内旅行の経費の高さもあげられている。実際、サンパウロ州などからは、国内で古くから観光地として知られるバイーアに行くよりも、米国のマイアミやドミニカなどのカリブ海のリゾート地に行く方が安い。
 これが「ブラジル内での旅行はコストがかかる」という印象を生んでいるが、それは欧米や南米諸国からの旅行者の間でも一致した見方だ。欧州は長引く経済危機で観光客の期待が出来なくなっているが、フォーリャ紙は、あるドイツ在住のブラジル人がブラジルに帰省する代わりに諸経費が半額で済むトルコで休暇を過ごした例を上げ、ブラジルが欧州からの旅行者の貴重な旅行先の選択肢から外れがちなことを指摘している。
 旅行業に詳しいマリオ・カルロス・ベニ教授は、「ブラジルで高いのは航空料金だけではなく、ホテルその他のサービスの諸々もだ」と語る。ブラジルでは観光地と観光地の間が離れているため、数カ所回ると想像以上の費用がかかり、旅行者を驚かすこともしばしばだ。
 また、ブラジルへの観光客数1位を誇るアルゼンチンからの旅行者の落ち込みも響いている。アルゼンチンからの観光客は167万人で2位の米国の3倍弱、国内で使った金も13億8千万ドルで、米国からの客の2倍弱など、ブラジル旅行業界にとってはお得意先だが、2011年は前年比14%の伸びがあった観光客数が、12年はインフレの影響などもあり4%の伸びに止まった。
 これらの事態に対応するべく、ブラジル観光公社(Embratur)では、他の南米諸国とリンクしたパックの南米旅行を推し進めることで国外からの旅行者を増やしたいと考えている。同公社では、観光地としてのブラジルを印象付けるべく、全世界に13の事務所を新設する意向だ。