ニッケイ新聞 2013年5月8日
ジウマ大統領は6日、新設の零細・小規模企業局長官にサンパウロ州副知事のギリェルメ・アフィフ・ドミンゴス氏(社会民主党・PSD)を指名した。アフィフ氏は副知事を辞任せず兼務の形をとるが、この動きには14年選挙を見込んだPSDとジウマ大統領の思惑が絡んでいる。7日付伯字紙が報じている。
ジウマ大統領にとってPSDを味方につけるのは14年の大統領選に向けた重要な戦略のひとつだ。11年にジルベルト・カサビ前サンパウロ市市長によって結党された同党は12年の全国市長選で4位、他党からの移籍組も多いことで下院議員48人、上院議員2人で議会内でも4位の政党となっている。現状のまま行くと同党は、大統領選挙で25分中1分39秒の持ち時間を確保できる。
PSDは結成以来、中立を保ち、国政に関しては与党にも野党にもついていなかったが、12年のサンパウロ市市長選では民主社会党(PSDB)のジョゼ・セーラ氏支持に回った。アフィフ氏自身は、以前所属していた民主党(DEM)時代から、ジェラルド・アウキミンサンパウロ州知事(PSDB)の副をつとめている。同氏はDEMの前身の自由前線党(PFL)時代、パウロ・マルフ氏やセウソ・ピッタ氏(進歩党・PP)指揮下のサンパウロ市市政で同盟も組んだ。
今後のPSDは、アフィフ氏の長官就任でPTと14年大統領選以降の同盟を結ぶことが確実視されているが、ジウマ大統領もここでPSDと同盟を組むことで、14年大統領選に立候補が有力視されているエドゥアルド・カンポス氏のブラジル社会党(PSB)とPSDが同盟を組むことを阻止できる。
また、大統領選からPTと同盟が組めれば、カサビ氏にとっても利点がある。同氏はサンパウロ州知事選で知事もしくは副知事、上院議員を狙っていると予想されているが、PTと組めれば、現PT政権のサンパウロ市市政が自身の市長時代の批判を行いにくくなり、選挙の際にも有利だからだ。
今回のアフィフ氏指名発表は6日午前、サンパウロ市でのサンパウロ州商業協会の理事会メンバーの就任式後に正式発表された。ジウマ大統領はこの式典にも参加してアフィフ氏を褒め称えていた。
ジウマとしては、アフィフ氏を零細・小規模企業局長官に据えることで、サンパウロ州の企業や中流階級の人々との結びつきを強化できるとの目論見もある。PTとサンパウロ州企業との間には古くからの因縁がある。サンパウロ州商業協会のロジェリオ・アマート新会長の父でサンパウロ州工業連盟(Fiesp)会長だったマリオ氏は1989年の大統領選の際、「ルーラ氏が大統領になったらブラジルの企業家80万人が国を出て行く」と言って批判を行っている。
アフィフ氏は9日朝、長官職に就くが、今後も引き続きサンパウロ州副知事の任務を行う。それは自身の後任をPSDBからあてがわれるのを避けたい意図もあるとされている。アウキミン知事とアフィフ氏は「国と州がうまく連携していければ」と書面で語っている。