ニッケイ新聞 2013年5月11日
ブラジルと米国の研究者達が、牧畜業や大豆生産の拡大のためにアマゾンを開発する事は、少雨や農業の生産性低下を招き、農業生産者の首を絞める事につながるとの研究成果を発表した。
法定アマゾンの森林伐採はここ数年の不法伐採の取り締まり強化などで減少傾向にあるが、一度開発された熱帯雨林は回復が難しく、生態系への影響は広範囲に及ぶ。
10日付エスタード紙によれば、今回発表されたのは、ヴィソザ、パンパ、ミナスの各連邦大学と米国のウッズ・ホール研究センターの共同研究の結果だ。研究者達は、アマゾンの熱帯雨林が地域の気候変化にどのように影響するかを確かめようとした。
アマゾンの熱帯雨林が土の中の炭素量を保ち、洪水などの防止に役立つ事や、雨を降らせる雲の形成に必要な水蒸気を発生させる事でアマゾンや南伯、南東伯といった地域の気候に影響を及ぼす事は周知の事実で、熱帯雨林が伐採されれば、雨が減って牧草も含む植物の生育が阻害され、気温の上昇も招く。
研究者達は森林伐採が続いて降水量が減った場合の牧畜業での生産性低下は、2050年までに30〜34%に達すると推定。更に、少雨その他に伴う気温上昇で、大豆の生産性も24〜28%低下するという。
生産性の低下率に幅があるのは、環境保護のための法や規制が作られ、政府が積極的に関与した場合と、森林伐採面積が年27%も拡大した2000〜04年並みに開発が進んだ場合を想定しているからだ。
森林開発による少雨や気温上昇といった影響が最も強く出そうな地域はパラー州東部とマット・グロッソ州北部で、土地利用の形態の変化が森が持つ自浄効果や回復力を超え、気候により甚大な影響を及ぼした場合は農業との共存が不能となる可能性もある。
牧草地や大豆畑を広げて一時的な生産増加を見たとしても、少雨や気温上昇で将来的に牧畜や作物栽培が出来なくなるなら、農業生産者が自分で自分の首を絞める事になるというのが研究者達の懸念するところだ。このような事態を避ける方法は、森林伐採を規制し、再植林などを促すためのより厳格な法の制定やその実行しかない。
研究者達は農産物の増産のための農業開発と称してアマゾンの森林伐採が増える危険性を指摘。法律を厳しくして森林伐採を減らしても、世界規模で進む地球温暖化による気温上昇が原因となって起きる農業の生産性低下は完全には避けられないとも警告する。世界気象機関は2日、南米の気温は12年に1〜2度上昇したと報告している。