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ジラウ発電所に三井も参画=GDFスエズの持分取得=57億レアルの大型取引=タービン始動は6月末か

ニッケイ新聞 2013年5月15日

 ロンドニア州マデイラ川に建設中のジラウ水力発電所の開発・運営に、日本の三井物産が参画する事になった。三井物産は13日、同発電所の開発・運営を担当するコンソーシアム最大手のGDFスエズの持分の3分の1(全体の20%)を57億レアル(約700億円)で取得する契約を締結したと14日付エスタード紙が報じた。

 北伯で建設が進むジラウ水力発電所は、建設中のベロ・モンテも含めれば国内4位の3750メガワット(MW)の発電能力を有する予定で、開発と運営はエネルジア・スステンターヴェル・ド・ブラジル(ESBR)が担当している。
 三井物産によるジラウ発電所の開発・運営参画は、ESBRで60%の出資比率を持つGDFスエズから、20%相当分を買い取る事で明らかになった。両社はカナダ、欧州、中東、アフリカ、豪州でも業務提携を行っており、ラ米での存在感を増したい三井物産はESBRでの出資比率を下半期に20%増し、連携を加速させる意向だ。
 一方、スエズ側にとっても、同社がコントロールする電力会社トラクテベル・エネルジアが負う可能性のあるリスクが三井物産の参画で軽減、市場の安心感を増す効果がある。トラクテベルは新規発電所の入札には直接参加せず、スエズの名前で参加。建設に伴うリスクが実質ゼロとなると、スエズの持分を取得する戦略をとっている。
 ESBR内の出資比率は、12年下半期のカマルゴ・コレア社撤退で、スエズ60%、Chesf20%、エレトロスル20%となっていたが、三井物産(実際は新規に設立される三井物産投資子会社)の参画で、スエズ40%、それ以外の3社が各20%となる。
 ジラウ発電所は、河川の自然な流れを生かした流れ込み式発電を採用。移植や魚道設置により既存の植物や魚類を保護するなど、周辺の生物の多様性保全に配慮したプロジェクトを掲げている。環境保護などを謳い文句にする三井物産にとり、ブラジルの発電量の約9割を占め、温室効果ガス排出が極めて少ない水力発電所の開発・運営は、会社の理念にも一致。14年のサッカーW杯や16年のリオ五輪などで電力需要の拡大が見込まれるブラジルでの電力の安定供給に貢献すると発表した。
 トラクテベルはブラジル政府が昨年行った電力会社との契約更新の影響を受けておらず、22カ所の発電所を管理。現在の時価は235億レアルで、更新後に株価下落のCPFLやCemig、エレトロブラスを凌ぎ、ブラジル一の発電会社となった。
 08年に建設が始まったジラウ発電所の稼動開始は、12年半ばの予定が13年1月に延期されたが、ストや送電網建設の遅れなどで更に遅れ、13年6月末か下半期になる見込み。三井物産が全世界に保有する発電容量は、ジラウの開発・運営への参画で6694MWとなり、約19%は水力発電が占めるという。