ニッケイ新聞 2013年5月15日
既存の施設の不足を理由にセミ・アベルト(昼間外出許可)の犯罪者に自宅での受刑を命じた裁判所があり、連邦最高裁がその是非について審議すると14日付エスタード紙が報じている。
ブラジルでの刑務所の不足は深刻で、セミ・アベルトの場合も、7万4647人の受刑者に対し、受入れ施設は5万1492人分しかなく、約2万3千人分が不足している。
こうした中、南大河州地裁は、2001年12月に現金1300レアルと携帯電話を盗み、暴行も働いて懲役5年8カ月のセミ・アベルトの刑となった受刑者に「セミ・アベルトの受刑者用施設に空きがない場合は家に帰ることが認められる」という判決を下した。
この判決は不適切と考えた同州検察局は2009年、同州高等裁判所に地裁の判断は刑執行法に適合するか否かの判断を仰いだが、高等裁は地裁の判決を支持した。
だが、検察はこの判決を不服として最高裁に上告した。検察は、先の判決は憲法第5条の「刑の執行は罪状や年齢、性別などに従って、目的別に定められた施設で行われる」にそぐわず、帰宅した場合は刑の執行にあたらないと訴えている。
この件が最高裁まで上告されたことによって危惧されるのは、最高裁が高等裁までの判断を支持すれば、施設に入りきらない2万3千人のセミ・アベルト受刑者に自宅での受刑が認められることで、犯罪を犯しても実質的に懲罰なしという風潮が広がりかねない。
こういう事情を鑑みて最高裁は、判決を下す前に公聴会を行うことにした。ジルマル・メンデス判事を報告官とする公聴会は27日と28日に開催されることになっており、弁護士会や司法、検察の代表も一堂に会して議論を交わす予定だ。
検察側は家での刑執行となった受刑者が再び犯罪に手を染めることや、条件付の自由が認められた軽犯罪者との区別がなくなることなどを怖れている。