ニッケイ新聞 2013年5月22日
移民船「さくら丸」の処女航海50周年を記念し、初めてとなる同船者会が19日、サンパウロ市リベルダーデ区の宮城県人会館で開かれた。マナウスなど遠方からの出席もあり、約25人が久しぶりの再会を喜び、昔話に花を咲かせた。
「お互い『まだ生きていたのか』という感じ」と話すのは宇佐見光男さん(70、神奈川)と山下明さん(76、同)。同県出身で、渡伯以前からの知人。入植地も隣の街同士で共に野球に興じていたが、山下さんが転職によりサンパウロ州を離れると、関係は疎遠になったという。
互いの電話番号も知らない状態だったが、開催を知った宇佐見さんが知り合いを伝って連絡、山下さんを誘った。「何年ぶりかわからない」と顔を見合せ笑った。
当時24歳、花嫁移民として渡伯した島村千世子さん(75、高知)は「一緒に船に乗ったのは、技術移民として渡る年下の大人しそうな男の子ばかり。本当に大丈夫かと思った」と振り返り、「それが会社を経営していたり立派な大人になっている姿を見れたのは嬉しい」と感慨深げに語った。
さくら丸で日本に行ったことのある宮本敏彦さん(76、二世)は「4歳で日本、高校卒業後ブラジル、そしてこのさくら丸で日本へと3回移住船に乗った。中でもさくら丸は、エアコンも完備された素晴らしい設備の船ということが強く印象に残っている」と懐かしげに語り、「同じ航海でなくとも、やはり今日の参加者には親しみを感じる」と楽しげに会話の輪に加わっていた。
処女航海の乗船者で発起人の中沢宏一宮城県人会長は「本当に良い会になった。毎年5月の第三日曜日に開催していきたい」と話していた。
第一回さくら丸は、1963年3月に神戸を出港。横浜、ハワイ、サンフランシスコ、ロサンゼルス、パナマなどに寄港し、同年5月14日にサントスに到着した。乗船者数は約700人。