ニッケイ新聞 2013年5月23日
2009年に流行したA型インフルエンザ(H1N1、当初の呼び名は豚インフルエンザ)の感染が例年より早めに広がり、サンパウロ州での死者が全国の死者の90%を占めていると22日付エスタード紙などが報じた。高熱が続く場合などは早めの診察が必要だ。
H1N1は09年に大流行し、5万人以上の患者と2060人の死者を出した。今年は5月12日までに全国で388人の患者、61人の死者が確認されているが、サンパウロ州での患者は328人、死者も55人で、全国の死者の9割が同州に集中している。昨年の全国での患者数は2614人、死者は351人だった。
事態を重く見た保健省とサンパウロ州保健局は21日に緊急のビデオカンファレンスを行い、特効薬オセルタミビル(商品名タミフル)の供給地点を増やす、治療指針の徹底をはかる、症状が現れたら早めに受診するよう促すの3点を確認した。
サンパウロ州での患者拡大は、予防接種対象グループの死者が65%を数えた2012年の南伯同様の傾向を見せている。昨年の南大河州での死者の内、発症後48時間以内に薬を服用した人は5%のみだった。
21日付G1サイトによれば、サンパウロ州保健局は、同州でのインフルエンザによる死者は57人でH1N1による死者は46人、季節性の流感による死者は11人と報告しているが、いずれにせよ、死者の大半は糖尿病や高血圧、心臓病などの慢性病患者や60歳以上の高齢者、妊婦、2歳以下の子供。これらの項目に該当する人は特に、風邪の症状が現れたら早めに受診する事が大切だ。サンパウロ市での死者は28人で、昨年1年間の死者9人の3倍以上になっている。
サンパウロ州では予防接種を29日まで延期しており、17日までに187万7千人が接種を受けた。その割合は、出産後45日までの女性100%、医療関係者93%、2歳以下の子供88・4%、高齢者82・3%、先住民74・7%、妊婦73・6%となっている。全国では同日までに710万人が接種を受けた。
パジーリャ保健相によれば、予防接種は本格的な寒さが来る10〜15日前に受けるのが望ましく、2〜2・5カ月間有効。サンパウロ州やサンパウロ市で死者が出るのは例年なら5月末以降で6、7月に多くなるが、今年は寒さ到来が早かったからか、4月から死者が出ていた。
H1N1インフルエンザの症状は季節性の流感とほぼ同じで、38度以上の突発的な高熱、咳や咽頭痛などの急性呼吸器症状、全身の倦怠感、筋肉や関節の痛みなど。季節性の流感より、下痢や嘔吐、腹痛を訴える例が多いようだ。