ニッケイ新聞 2013年5月25日
2010年11月に平定化されたはずのリオ市北部ペーニャ地区のファヴェーラ・アレモンで、麻薬組織から学校や商店などへの閉鎖命令や夜間の外出禁止令が出、住民が不安な日々を過ごしていると23、24日付ブラジルメディアが報じた。
複数のファヴェーラが集まり人口6万のアレモンは、隣接するペーニャと共に麻薬密売組織のコマンド・ヴェルメーリョ(CV)が支配し、リオ市内で最も危険な地域とされていたが、10年11月に市警や軍警に連警と軍も連携、海軍の戦車まで繰り出した平定作戦が行われ、陸軍が継続駐留。2012年4月18日にノヴァ・ブラジリアとファゼンジーニャの二つの平和駐留警察隊(UPP)が設置されてからは、軍警の手に治安管理が委ねられ、UPPも増設された。ロープウエーが開設された事もあり、平和が戻ったフェヴェーラはリオの新しい観光名所にすらなっていた。
だが、22日夜起きた犯罪者と警官の銃撃戦でケガをしたアンデルソン・シンプリシオ・デ・メンドンサ(29、通称オレーリャ)が死亡、10年の平定時にCVの地区リーダーだったルシアノ・マルチニアノ・ダ・シウヴァ(通称ペゾン)が逃亡先のパラグアイで死んだという噂も流れた事で異変が起きた。
同地区の商店や学校、ボルサ・ファミリアの登録所は23日朝から門戸を閉ざし、一時開校した学校や保育所も、1時間程度の授業を行っただけで生徒を帰らせたため、連絡を受けた親が慌てて迎えに走った他、保健所も通常より2時間早く業務を打ち切った。
UPPの隣にある店までがシャッターを閉ざしている様子や、夜間の外出禁止令を気にして家路を急ぐ人の姿など、CVが権力を振るっていた頃を思い出させる光景はテレビでも放映された。
リオ軍警はこのような動きを受け、地区内のパトロールや検問を強化。あちこちに散る警官の姿は同地区住民に安堵感を与えたものの、CVによる支配が何十年も続いていた地区だけに、住民の多くは再び不安に陥っており、店や学校は24日になっても門戸を閉ざしたままだ。同地区ではこの数カ月、犯罪者と警官との衝突が回数を増していたともいう。
リオ市のUPPは33カ所に増えているが、今回のアレモンでの出来事は麻薬密売組織の影響が今も根強く残っている事を示しており、大型行事が続くリオ州の治安体制に新たな波紋を投げかけている。