ニッケイ新聞 2013年5月29日
3月に死去したウゴ・チャベス前大統領の後任のニコラス・マドゥーロ大統領が言論統制を強化し、政府に都合の悪い発言を行う人を追放しているとの疑惑が持たれている。26〜28日付伯字紙が報じている。
26日付伯字紙によると、ベネズエラ国営放送(VTV)の番組「ラ・オヒージャ」の司会者、マリオ・シルヴァ氏が21日に突然番組を降板し、その後の行方がわからなくなっている。
その前日、反政府派はシルヴァ氏が、キューバの諜報機関員のG2に、与党のベネズエラ統一社会党(PSUV)が二分しており、反マドゥーロ派が大統領候補の座をマドゥーロ氏から奪おうとしたものの失敗したなどの話を51分間にわたり実名と共に行ったことを暴露した。大統領候補の座を奪おうとしたのは、国家評議会のディオスダード・カベーロ氏だと言われている。
シウヴァ氏は20日の放送の冒頭でこの疑惑を否定したが、翌日、健康上の理由で辞任すると発表した。同氏はチャベス氏の親友で、「ラ・オヒージャ」内でも反チャベス派を攻撃することで知られていた。
また、「チャヴィズモ」に唯一反抗していることで知られていたグローボヴィジョン局でも25日、同局の看板司会者であるキコ・バウチスタ氏が解雇された。理由は、24日の同局の看板番組「ブエナス・ノーチェス」で、マドゥーロ大統領と4月に大統領の座を争ったエンリケ・カプリレス氏の会話を流したためだ。
グローボヴィジョン局は反チャベス局として知られ、2009年には政府から230万米ドルの罰金を課せられるなど規制を受けながらも放送を続けていたが、今年3月に経営難から株主が売却を発表し、5月にチャベス派の企業家の手に渡っていた。カプリレス氏は、同局の新しい経営者らが同氏の会話を生で放送するのを禁じ、放送内容を統制していると訴えている。
同国の4月の大統領選は、カプリレス氏がマドゥーロ氏側の不正を疑うほどきわめて小差の接戦で、国も二分された状況であることから、こうした統制や締め付けによる余波が危惧される。
また、こうした「チャヴィズモ」による言論統制が南米の他の国にも影響が及びつつあると危惧する声もある。アルゼンチンでも、ネストル氏とクリスチーナ氏のキルチネル夫婦による政府体制が10年を迎えたが、クリスチーナ大統領も「メディア法」を成立させて言論統制しようと躍起で、反政府系大手のクラリン社の機能を停止させようとしている。