ニッケイ新聞 2013年5月30日
地理統計院(IBGE)が29日、第1四半期(1〜3月)の国内総生産(GDP)は2012年第4四半期比で0・6%、昨年同期比では1・9%の成長と発表したと同日付各紙サイトが報じた。この数字は政府の経済スタッフや市場関係者の予想を下回った。
28日付エスタード紙や29日付フォーリャ紙によれば、政府関係者や市場関係者は第1四半期のGDPは0・9%前後の成長と見ていたが、実際は直前四半期比(以下前期比)0・6%の成長で、期待値を下回った。
選挙を来年に控え年内には景気回復を印象付けたいジウマ大統領だが、第1四半期の成長が0・6%に終わった事で、今年の成長率を最低でも2011年の2・7%以上にという願いは達成困難となった。同年第1四半期は前期比0・8%でジウマ政権最良の成長を遂げたが、その後は0・6%、マイナス0・1%、0・1%で、年間2・7%、翌年は各四半期が前期比0・1%、0・3%、0・4%、0・6%、年間では0・9%の成長に止まった。
今年の場合、第1四半期の成長を支えしたのは前期比9・7%、昨年同期比も17%と1998年の統計開始以来の高成長を遂げた農業で、前期比0・5%のサービスや前期比マイナス0・3%の工業の不振を補って余りあった。
農産物の収量は、大豆が22・8%増の8150万トン、トウモロコシも6・9%増の7800万トンなど、こちらも新記録を更新。GDP成長率も、大豆23・3%、トウモロコシ9・1%、タバコ5・7%、米5・1%と好調だ。
農業のGDPは輸送網や倉庫の整備次第で更に上るはずで、専門家の試算による輸送経費はブラジルGDPの19・23%を占め、農業部門の輸送費もGDPの8・5〜9%に当たる。農産物を載せてサントス港に向かうトラックが集中するアンシエッタ道では28日も50キロの渋滞が起き、諦めて引き返す運転手も出た。大豆の輸送費はマット・グロッソ州ソリーゾからサントス港までが42・6%、ソリーゾからパラナグア港までも29・9%値上がり中だ。また、倉庫の不備などで無駄になる大豆は収量の6〜13%で、作付面積の拡大や生産性の向上努力の効果を殺いでいる。
工業は、製造業が0・3%成長したものの、鉱業の2・1%減などが全体の足を引っ張った。昨年同期比では、石油業界の6・6%減などが響き、1・4%のマイナス成長となった。
輸入は前期比6・3%伸び、輸出は同6・4%減。投資は4・6%伸びたが一般消費は0・1%の伸びで、公共支出は変化なし。景気刺激や消費促進のための政策を18回も導入してきたギド・マンテガ財相は29日、消費促進のための新たな政策は採らないとの意向を表明。景気回復が予想を下回った事は、通貨政策委員会(Copom)の経済基本金利(Selic)引き上げ幅にも影響する可能性がある。