ニッケイ新聞 2013年5月30日
下院で28日、麻薬対策法の改定についての審議が行われ、麻薬密売組織幹部に対する最低刑期の延長などの改正が承認され、上院審議に回されることになったが、反論も決して少なくないようだ。29日付伯字紙が報じている。
下院で承認された改正点の一つは、麻薬密売組織の幹部に対する最低刑期を従来の5年から8年への延長で、最高は15年の実刑という点は変わらない。
オスマール・テッラ下議の提案は、「全ての麻薬所持者」に対して最低8年の刑を科すとなっていたが、ジョゼ・ジェノイーノ下議をはじめとした労働者党(PT)議員たちが「原案通りだと、自分が吸うための麻薬を買ったり持っていたりした場合も投獄され、麻薬常習が4人集まって吸引していた場合も組織犯罪扱いになる」「単なる麻薬常習者が刑務所で麻薬組織の人間と接触すれば、出所してから密売者になる怖れがある」と反論した。法案自体は「あくまで麻薬組織の取り締まりが目的」との解釈で通過したが、PT議員が提出した、初犯で少量の所持の場合は刑を6分の1〜3分の2に軽減する補足案も採択された。
また、麻薬常習者の入院についての規定改正も行われ、常習者自身の意思で行う「自発型」に加え、家族や合法的な親権者、治安部門以外の公務員が要請した場合の「強制型」の入院を認めた。「強制型」入院の可否は専門医の診断次第で、入院期間は最大90日までと規定された。
常習者の強制入院問題は、大統領府の理解は得られたが、法務省と保健省からは強い反発が出ている。両省は、常習者を強制入院させることが治療の根幹となってしまうことを怖れている。
PT議員たちは、同法の改正で、統一医療保険システム(SUS)の資金を民間の療養施設などに配分できると考えていたが、大半の下議は常習者の治療には思い切った財政援助が必要だとし、常習者救援プロジェクトに寄付した人には寄付金額の30%の所得税を控除する案を採択した。ジェノイーノ下議はこの件は連邦政府が却下するだろうと見ている。
また、常習者の社会復帰支援のため、30人以上の労働者を必要とする公共工事の入札の際は、労働者の3%を常習者に割り当てるプロジェクトも承認された。
フォーリャ紙はこの法案について「麻薬密売は減らないであろうが、逮捕者は間違いなく増えるだろう」と評している。