ニッケイ新聞 2013年5月30日
【既報関連】在べレン日本国総領事館を縮小するという日本政府の方針に地元日系社会が反対している問題で、麻生太郎副総理らに陳情する目的で訪日した山田フェルナンド(パラー日系商工会議所会頭)、生田勇治(汎アマゾニア日伯協会会長)の両氏が28日、麻生氏と面談し、麻生氏がその場で出張駐在官事務所ではなく「領事館」にすると約束したことが、同行した西森ルイス、飯星ワルテル両下議の連絡でわかった。滞日中の西森氏は、本紙の電話取材に「べレンの皆さんの希望が叶って満足している。私たちが同行したことで力になれたとすれば嬉しい」と充実感をにじませた。
西森氏によれば、地元日系社会や諸団体からの嘆願書を受け取った麻生氏は本件を気にかけていたといい、べレンから訪れた二氏に「格下げにはならないようにする」と話したという。
在べレン総領事館の沼田行雄総領事は本紙の取材に、「今後どのようになるか、はっきりしたことはわからない。(二氏が)訪日して副総理にこの問題を陳情して、(麻生氏が)話を聴かれた今、これから検討されるということだと思う」とのべるにとどめた。
一方、「現地では反対の思いが強い。実際に日本に行って、こちらの声を届け、ブラジルは大事な国だということを伝えたことの意味は大きい」とみている。
一方、本紙からの一報を受けたパラー日系商工会議所の山中正二副会頭は、「総領事館から領事館になるというのは、格下げ。ブラジル側の人はがっかりするのでは」と声を落とす。
「総領事公邸もなくなることで、積極的な外交が縮小するであろうことを我々は危惧している。パラー州には多くの資源があり、中国や韓国のように官民一体となってビジネス展開をやる必要がある。何のため我々が移住したのかわからない」との心情を吐露した。
領事館に変更されれば総領事はおらず公邸もなくなり、領事のみが常駐することになる。在聖総領事館に問い合わせたところ、現在、世界中に約200ある日本の在外公館は大使館、総領事館、政府代表部、出張駐在官事務所のいずれかだ。世界で「領事館」を名乗っている在外公館はなく、ベレンがそうなれば世界唯一となる。
「領事館」と「事務所」の区別は、駐在する領事の数や予算枠等において、必ずしも明確ではないようだ。今回の判断は多分に〃政治的〃なものである可能性があり、具体的にどんな違いがでてくるのかは、今後検討された上で明らかになる。
山田、生田両氏の訪問には縮小に反対の立場を表明していたマルコス・ガルヴォン駐日ブラジル大使も同行し、二氏は麻生氏のほか河村健夫衆議、藤村修元官房長官、外務省の山田彰中南米局長、清水亨南米課長らとも面会した。