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基本金利8%に引き上げ=インフレ抑制を最優先=消費は経済の牽引役降板=今後気になる為替の動向

ニッケイ新聞 2013年6月1日

 【既報関連】地理統計院(IBGE)が第1四半期の国内総生産(GDP)は0・6%の成長と発表した5月29日、中銀の通貨政策委員会(Copom)が、経済基本金利(Selic)を0・5%ポイント引き上げて年8%としたと5月30日付伯字紙が報じた。31日付伯字紙によれば、金利引き上げはインフレ抑制と信頼感回復のためで、中銀は、消費は経済回復の牽引車の役を終えたと見ている。

 第1四半期のGDPが政府や市場が予想していた0・9%を下回る0・6%の成長に終わった事で、基本金利の引き上げ幅は小幅に抑えられるとの予想に反し、29日の通貨政策委員会は、満場一致で0・5%ポイントの引き上げを決めた。
 経済基本金利が史上最低の年7・25%まで引き下げられた事はジウマ政権の勲章の一つだったが、インフレ圧力が増した今年は、4月、5月の2委員会連続の基本金利引き上げとなった。
 5月の委員会での金利引き上げは、インフレ昂進を懸念するトンビニ中銀総裁の発言からも確実視されていたが、経済成長が思わしくない事が判明した直後だから、経済活動を冷え込ませないためにも0・25%ポイント程度の引き上げにとの政府の期待に反し、0・5%ポイントの引き上げが敢行された。
 トンビニ総裁は、0・5%ポイントの引き上げはインフレを抑制し、消費者や企業家達の信頼感を取り戻すためで、今、インフレを抑制しておかなければ、選挙年の2014年の状況は更に厳しくなるとの見解を表明。30日には、国内消費にはもう経済を牽引する力はなく、今後の経済の牽引役は投資が負うべきだとも発言している。
 第1四半期のGDPが低迷した原因の一つは一般消費が0・1%の伸びに止まった事だが、消費停滞は、インフレによる購買力低下や、減税対象の家電などが一般家庭に普及してきた事などに起因。失業率は低くても、給与の安いサービス部門の雇用中心では、急激な所得向上も望めない。
 第1四半期のGDPは農業が押し上げたが、農産物の収穫期を外れたりする第2、第3四半期の成長は第1四半期より鈍くなるため、年3・5%成長という政府目標の下方修正は不可避。ジウマ政権初年の2・7%以上の成長との願いも、危ういとの見方が一般的だ。低成長に高インフレという構図で懸念されるのは投資の低迷で、基本金利が8%に引き上げられた事が国外投資をどの位呼び込むか、投資が成長を加速するとされるGDPの25%に達するのがいつかは判断が難しい。
 米国の金融緩和策の変更と中国経済が予想したほど伸びていない事などで、世界的に進むドル高はブラジルでも明らかで、29日は1ドル=2・11レアルまで昂進。中銀は2・05レアル程度で抑えたいはずだが、マンテガ財相のドル高レアル安は輸出に追い風との発言で、市場には政府がある程度のドル高容認という理解も広がったようだ。