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IEDIが保護貿易警告=「世界から取り残される」=南米諸国への輸出は激減

ニッケイ新聞 2013年6月5日

 ブラジルではここ数年保護貿易主義色が強まっており、産業開発研究所(Iedi)が「将来の国内産業や経済を持続して支えるためには、国内市場への注力だけでは不十分」との見方を示し、諸外国との新たに貿易協定を締結などの政策を早急に実行するよう政府に要請する見通しだと4日付エスタード紙が報じた。
 国内市場の停滞や輸入超過の現状を重くみる同研究所は、「ブラジルが貿易協定を結ぶ国の少なさは国際市場での不在感の表れ」とし、近日中に、新たな政策実行を早急に求める文書をジウマ大統領に提出するという。
 ペドロ・パッソス代表は「このままでは企業家や政府、社会も含めたブラジル全体が国際市場から排除され、一次産品の生産も後退する」と警告。全国工業連盟(CNI)、サンパウロ州工業連盟(Fiesp)、全国自動車工業協会(Anfavea)も、交易政策変更が必要との見解を示している。
 それらの主張を裏付けるのは、他の南米諸国(亜国、メキシコ、ペルー、コロンビア、チリ、エクアドル、ベネズエラ、パラグアイ、ボリビア)への輸出が08年〜11年に54億レ減少したというデータだ。特に亜国への輸出減少は20億レと著しい。
 南米諸国は近年、米国や欧州連合を含む様々な貿易圏に加盟し、中国や欧米、メキシコ等からの輸出を優先している。例えば、チリは62カ国、コロンビアは60カ国、ペルーは52カ国、メキシコは50カ国と貿易協定を結んでいるが、ブラジルは22カ国で、その相手も、イスラエルやエジプト、パレスチナ、南部アフリカ関税組織(Sacu)など、経済面での存在感はさほど大きくない国や地域ばかりだ。
 Anfaveaは2017年までに100万台の車を輸出するという目標を掲げ、過去7年で90万台を輸出したがそこからは激減。2012年は44万2千台で、今年は42万台にも満たないと見込まれている。
 また、2007年には2万889社あった輸出関連企業は現在は1万8630社、輸入する企業は2万8911社が4万2458社に増えた。
 5月の貿易収支は輸出額が輸入額を7億6千万ドル上回り、3月に続く今年2度目の単月黒字を記録した。それでも、5月の記録としては2002年以降最悪だ。1月〜5月の累積赤字は54億ドルで、年頭5カ月間の記録としては史上最悪の数字となっている。
 ジェトゥリオ・ヴァルガス財団(FGV)世界貿易投資センターのヴェラ・トルステンセン氏は「国内需要は著しく増加したが、大半は中国製品でまかなわれた」「国内産業は未だに国際競争力を失ったまま。その事実を基に、政府に新たな政策実行を求めなければ」と話している。