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ジウマ大統領=暫定令595号に拒否権行使=予想以上の13項目で=与党も含め議会側が反発=ターミナル業務の改善は

ニッケイ新聞 2013年6月7日

 ジウマ大統領が5日、5月16日に議会を通過した港湾ターミナル民営化に関する暫定令(MP)595号を裁可したと6日付伯字紙が報じた。同暫定令は、紆余曲折の末に上下両院を通過した法案だが、13項目に拒否権が行使され、議会の反発を招いている。

 昨年末に連邦政府が出したMP595号は、港湾ターミナルの手続きの煩雑さなどを軽減し、製造業などにコスト削減による国際的な競争力回復をもたらすと期待されていたもので、有効期限が切れる5月16日に上院で承認され、大統領の裁可を待っていた。
 下院での同暫定令の審議が思うように進まず、有効期限が切れる事を案じたジウマ大統領らが、議員割り当て金の払い出しを約束するなど、方々に手を尽くした事は5月11日ならびに同16日付本紙でも報じたが、上下両院で承認された時点で予想された拒否権行使は5項目程度だったのに対し、5日に裁可された法案は、13項目に拒否権が行使された。
 大統領が拒否した項目の一つは、特定の企業の貨物だけを扱い、政府の営業許可を必要としない工業ターミナルの新設だ。政府は当初から、自前の貨物だけを扱ったり外注業者に委託した形のターミナルを一掃する考えを示していた。
 また、1993年より前に民間企業が操業していたターミナルは最低5年の操業延長を認めるという項目や、93年以降の契約は書類に記載された期間に相当する年数の延長を義務付けるという項目にも拒否権を行使。新規契約は25年有効とし、投資が行われた場合は25年自動更新する、海上輸送を生業とする会社が5%以上の出資比率で入札に参加する事を制限するといった部分にも拒否権が行使された。
 政府側は、政府原案に近い状態に戻す事で契約が切れている50件以上の港湾ターミナルでの入札時期を早め、来年1月までにパラー州ベレン港とサンパウロ州サントス港の入札を行なう意向だ。
 グレーシー・ホフマン官房長官は、早ければこの夏の収穫期から輸送環境の改善効果が現れる事を期待しており、工業界などは、「ターミナルの民営化で貨物取扱量に見合った港湾使用料金が設定されれば、ブラジルコストと呼ばれる余分な経費が削減され国際的な競争力回復に繋がる」「競争力を殺ぐ項目に拒否権を行使して港湾コスト改善を図るのは必至」「大統領はMPが目指した効果を維持しようとしただけ」と、好意的な見方を示している。
 ただ、拒否権の対象は下院で論議が紛糾した項目ばかりで、15日までに通過させるために奔走した下院の与党リーダー達からも約束が違うと反発の声が上がっている。拒否権が行使された項目を議会で復活させようという声は既に出ており、現政権の議会工作の拙さを再び露呈。伯字紙には、歴代政権には実力派の調整役らがいたが、現政権では大統領が孤軍奮闘を強いられているという社説まで出ている。