ニッケイ新聞 2013年6月12日
米国の景気回復機運が高まる中、ブラジルではドル高傾向が続き、10日、11日の為替市場では中央銀行が1日2度の介入を実施。11日付伯字紙によれば、政府がドル流入を促してドル高に歯止めをかけようとしているのに、国外投資家の信頼度は低下、国内総生産(GDP)の成長予想も2・53%に下方修正された。
米国の雇用状況が改善し、景気回復機運の高まりで金融緩和政策が変更されるとの見方は、世界各国の為替や株式の動きに大きな影響を与えており、ブラジルでも10日の為替市場は、前日比0・58%ドル高の1ドル=2・146レアルで取引を終えた。
10日の終値は、中銀がスワップ入札という方法で市場に2度介入し、10億近いドルを売却した結果だ。最初の介入は7月1日買い戻し分で4億9830万ドル、2度目の介入は8月1日買い戻し分4億9780万ドルで、1日の取引中に中銀が2度介入したのは、1ドル=2・08レで上下動した12年12月26日以来。2度の介入でドル高圧力はやや緩和したが、それでもドル高が進んだ。
ドル高傾向は11日も続き、午前中に1ドル=2・166レまで進んだため、11時前に中銀が介入し12億4700万ドル分を売却。11時半頃も9億9700万ドル分を売ったため、午後3時頃のレートは1ドル=2・148レ前後で動いている。
極端なドル高を避けたい政府は先週、ドル流入を促すため、外国人投資家による固定利回り商品への金融取引税(IOF)課税撤廃を発表。他の対策も検討中だが、米国の格付会社スタンダード&プアーズ(S&P)は6日、鈍い経済成長と脆弱な財政政策、政府に対する信頼性悪化などから、ブラジルの格付見通しを「安定的」からメキシコやコロンビア並みの「弱含み」に引き下げた。
S&Pの格付変更は外国人投資家の信頼感指数にも反映され、4月30日は173点だった指数が5月31日202点、6月6日210点、7日218点と悪化の一途。外国人投資家の信頼感低下は11日のサンパウロ市証券市場にも表れ、午後3時現在のイボヴォスパは4万9943ポイントと2・68%下げた。
外国人投資家の信頼感低下は国外投資減少と共に、国債額の低下と利子高騰を招く。新興国ではドル高や投資家の信頼感低下傾向が拡大中だが、回復基調にある米国は国債額が上がり、利子が低下する傾向にある。S&Pはブラジルでの政府債務水準上昇なども懸念しているという。
S&Pは今年のブラジルの経済成長率を年2・5%と予想しているが、10日に発表された中銀による市場調査でも、今年の成長見込みが2・53%に下方修正された。連邦政府は現在、成長見込みや輸出額の目標などを口にしなくなっているが、低成長、高インフレの構図は、庶民生活と共に、14年選挙で再選を狙うジウマ大統領の計画をも脅かし始めている。