ニッケイ新聞 2013年6月15日
13日夜、サンパウロ市セントロでバスとメトロの料金値上げに対する4度目の抗議行動が起こり、通行人やバス乗客など、抗議とは無関係の市民や取材記者ら約100人が負傷、192人が身柄を拘束された。参加者は軍警が5千人、参加者側は2万人と発表。14日付フォーリャ、エスタード両紙はじめ伯字メディアは「軍警の鎮圧に暴力性が増している」と伝えており、回を追うごとに被害が拡大し、無関係の市民も巻き込まれている事態を受け、サンパウロ市では連日緊迫した雰囲気が流れている。
サンパウロ市での暴動が影響してか、ここ数日間、公共交通機関の料金値上げに対する抗議行動が全国的に起きている。13日はサンパウロ州ソロカーバ、リオ、ポルト・アレグレ、マセイオー、マナウスでもデモがあり、リオ州のセルジオ・カブラル知事は「(一連の抗議行動は)市民の自発的な行動というより、政治的な匂いがする」と発言している。
本日からコンフェデ杯が始まるというタイミングで展開されている抗議行動については、米国や英国等、国外のメディアも言及。スペインのエル・パイス紙は「サンパウロ市ではまた抗議行動が起き、戦場のような状況が繰り広げられた」と伝え、反響を生んでいる。
14日付伯字紙やサイトは、ゴム弾で負傷した一般市民やジャーナリストらの写真やコメントを列記、軍警が警察車両を壊す場面のビデオも流れた。サンパウロ州保安局は軍警の鎮圧行動について、事実関係の調査に乗り出す。
13日にフランスから帰国したフェルナンド・ハダジサンパウロ市長、ジェラルド・アウキミンサンパウロ州知事は各々、「前回は抗議参加者側の暴力だと思ったが、今回は軍警の鎮圧が行き過ぎている印象を受けた」「自由なマニフェストは民主主義の基本だが、公共の場での器物損壊や暴力は受け入れ難い。政府としてヴァンダリズムは許さない」とコメントしている。
料金見直しの可能性については市長と州知事の双方が否定。ハダジ市長は「時間をかけて調整し、値上げ率は実際のインフレ率より低く抑えた。それを一夜で変えることはあり得ない」と強調している。
フォーリャ紙が13日(抗議行動前)に815人を対象に行なった調査では、55%が「値上げに対する抗議行動に賛成する」と回答したが、常軌を逸した暴力性を参加者に感じるとの回答は78%、軍警に感じるとの回答は40%あった。
13日はCPTM(パウリスタ都電公社)従業員のストライキもあり、9、11、12号線の運行が停止された。運行が正常に戻ったのは午後8時15分で、少なくとも100万人の足に影響が出た。また、コンソラソン通りでは暴動のせいで帰宅ラッシュ時に警官と参加者に挟まれて数百人が立ち往生、パウリスタ周辺の地下鉄の駅が閉鎖されるなど、サンパウロ市と近郊の交通が麻痺した。
なお、サンパウロ市の次の抗議行動は18日と予告されている。