ニッケイ新聞 2013年6月15日
「ジャポネース、教えてあげるよ。ブラジルには男も女も、生きている人間の数だけ肌の色の違う人間がいるのさ。でもこの国には、二種類の人間しかいないよ。金持ちと貧乏人のどちらかさ。お前さんも手遅れになる前に、こんなファベーラ同然のアパートから一日も早く出ていくことだよ」
サンドラはバスルームに入り、着替えを済ませると、児玉と一緒に部屋を出た。
児玉の部屋には高級ウィスキーがあるという評判は、トレメ・トレメに住む女たちにあっという間に広まった。吹聴したのはサンドラだ。サンドラは客が取れずに戻った夜は泥酔して児玉の部屋のドアを叩いた。部屋の入ると児玉のベッドに勝手に潜り込んできた。しばらくすると仲間のマルシアとアドリアナを連れてくるようになった。サンドラは他に女がいても、ウィスキーを注いだグラスを片手に、全裸になり児玉が寝ているベッドに潜り込んできた。
ベッドでサンドラと児玉がセックスを始めようと、そんなことは気にならないのか、あとの二人は壁際に置かれたボトルを開け、各々が好きな酒を飲んでいた。セックスが終わると、サンドラはブラジャーとパンティーを付けただけの格好で、ふらついた足取りでエレベーターホールに向かった。サンドラの住む階は二十一階だ。
酒を飲んでいた二人も帰るのかと思ったら、黒人に近い肌をしたモレーナのマルシアがワインのボトルを手にしながらベッドに近寄ってきた。喉を鳴らしながらラッパ飲みし、ベッドの横に置くと衣服をそこら辺に脱ぎ散らかしながら、児玉の横に寝た。
「ジャポネース、今度は私と楽しもうよ」
児玉は喉の渇きを覚え、水を飲もうと起き上がろうとした。マルシアは両手で児玉を突き飛ばしベッドに寝かせると、ワインのボトルを口に運び、口移しで児玉にワインを飲ませた。口から流れ落ちたワインがシーツに染み込み、赤いシミを作った。
マルシアは若いせいかバストは熟れたマンゴーのように艶があり、ツンと上を向いていた。マルシアは児玉を抱きかかえるようにして起こすと、毒々しい紫色の乳房を児玉の口に押し付けてきた。児玉はマルシアが望むように口に含み、やさしく吸ったり、時には力を入れて噛んだりした。片方のバストをゴムマリでも弄ぶように、揉み続けた。マルシアが体を反らせ喘いだ。
児玉は下腹部を指で弄られる感触を覚えた。マルシアの陰に隠れて見えなかったが、いつのまにかアドリアナも全裸になっていた。
アドリアナは指で児玉の男性自身をなぶり、硬くなると口に含んだ。溜まらず児玉は射精したが、アドリアナはそんなことはお構いなしに口の中で、男性自身を転がし続けた。口の奥へと吸い取るように舌を絡ませた。
回復した頃を見計らってアドリアナは後座位になり、児玉の男性自身を自分の中に導き入れ、両手を児玉の膝の上に置いて、腰を激しく上下させた。
サンドラとセックスした後、マルシアとアドリアナの二人を相手にセックスをしている。生まれて初めての体験で、異様な興奮を覚えた。ワインやウィスキーを飲みながら、快楽にのたうち回るようなセックスを続けた。
目が覚めると、日が高く上り、午後一時を回っていた。ベッドの上にはマルシアもアドリアナも寝息を立てて眠りこけ、起きる気配もない。出社しなければと思い、体を起こした瞬間に激しい頭痛に襲われた。ベッドの横には空き瓶が何本も散乱していた。
テレーザのアパートに泊まらない夜は、毎晩こんな調子で、午前二時を過ぎた頃から、女が児玉の部屋に集まり始めた。すべてトレメ・トレメに住んでいるコールガールばかりだ。
取材もせず、記事も書かないで居眠りばかりしている児玉に、編集長もついに堪忍袋の緒が切れて、児玉は外回りを禁じられ、社内で編集作業を命じられた。任されたのは、時事通信から配信されてくるニュースで一面の記事を編集することだった。
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