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非日系も大活躍「移民能」=4流派が異例の合同公演=質問も多数、関心高く

ニッケイ新聞 2013年6月15日

 観世流、宝生流、喜多流、金剛流の4流派による異例の合同公演『移民能〜第3回能楽の集い』が4日、PUC大学内のトゥカレナ劇場で開催され、約180人が来場した。会員の高齢化で活動が縮小しつつある各流派を盛り上げようと、昨年誕生したブラジル能楽連盟(山口正邦会長)が若い非日系人を多数引き入れ、公演の一部をポ語で公演したり、伝統楽器の代わりにギターを使ったりと創作性溢れる〃移民能〃公演が実現した。

 来場者の大半は非日系。会場が紅白幕と大きな松の木のイラストが飾る中、喜多流の若手非日系グループによる連吟「月宮殿」で幕開け。観世流は、子と生き別れになった母の狂乱を描いた「桜川」を、宝生流は「紅葉狩」で平維茂による鬼退治を、金剛流は平敦盛の霊が平家の栄枯盛衰を物語る「敦盛」を熱演した。
 「船弁慶」は、4流派が各流派の差異をすり合わせながら全編を公演。若手による愉快なポ語狂言も盛り込まれ、会場を盛り上げた。約2時間半にわたる公演が終わると、観客は総立ちで歓声と拍手を送った。
 最後に、観客と各流派の代表者らとの対話の時間が設けられた。観客からは「能は宗教から生まれたのか」「道具の意味は」など、能の成り立ちや舞台の要素に関する質問が飛んだ。代表者らは、訪日して能を学び、当地で広める取り組みを行ってきたことや、各流派の違い、また「キーワードは『幽玄』と『狂』で、登場人物の半分は幽霊。真実なのは死の世界」など、根底にある理念も紹介した。
 公演の企画に携わった一人、日本での能経験20年という小笠原潤さんは「4流派を合わせて一つの能を作り上げるのは難しいが、一緒に研究したり悩んだりできて楽しかった」と振り返り、「ブラジルでは人数が限られているから、一人ずつ戦っていたら滅びるだけ。お年を召した方を大切にし、皆で仲良く、何とか能をつなげていきたい」と意気込みを語った。