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日系社会も国際行事に協力=ブラジル日本文化福祉協会 会長 木多 喜八郎

ブラジル日本移民105周年

ニッケイ新聞 2013年6月15日

 日本移民105周年を迎えるにあたり、今日のブラジル日系社会の繁栄を築いた先駆移民の御苦労を偲び、開拓先没者の御霊に対し衷心より哀悼の意を表する次第でございます。
 日本人が新天地を求めてブラジルへ渡ったのが二十世紀の初期でありますが、100年間に約25万人が移住し、現在、日系社会の人口は150万人以上と推定されています。1980年より約30万人の日系人が母国へ研修、出稼等の機会を得て祖国で勤労、勉学に勤しんでいましたところ、2008年のリーマンショックに端を発した日本の経済不況によって、約12万人にのぼる日系人がブラジルに戻って来ました。
 帰国した若者は新しい日本文化をブラジル社会に持ち帰った者達であると言えるでしょう。今の日本の現実を身を持って体験し、日本文化と現状の日本にどっぷり浸かり、洗礼を受けて帰ってきた者達であることは疑いも無き事実であります。
 ブラジルにいてメディアを通じてしか現在の日本を見、知ることが出来ない、古き良き時代の日本文化を両親より聞かされて育った、大多数のブラジルの日系人と、日本の伝統文化、芸術を含めた現状を経験して戻って来た者達との融合を如何に図るかによって、今後の日系社会の「日本文化とコロニアの伝統」に重点をおいた新しい活性化への道が開かれてくるのではないかと思います。
 今後、日系団体・日系社会を存続させていくには、ブラジル社会の中で日系人が、ブラジル人として、いかに日本文化を軸にしてその特異性を発揮できるかに掛かっていると思われます。その意味においても日本とブラジルの文化交流の促進が最も重要な要となってきます。
 持続可能な経済・貿易関係は相互の信頼関係の上に築かれるものでありますが、日本からの企業進出が増加を示している現在、日本が築き上げた信用こそが最も力強いパートナーとしての存在であり、先駆移民が伝えた大切な遺産であります。
 この基盤を更に有効に活用するためにも、人材育成を強化し、若い世代の交流をもっと活発に行う必要性があります。日本政府のご厚意によって、半世紀近くにもわたり県費留学、研修生制度を通じてブラジルの日系人が訪日する機会を得て日本文化を体験してまいりました。ですが、今度は日本の若い世代にも同じようにブラジルを知ってもらう機会より多く設けて、ブラジルを体験する人が増えることで日伯両国の関係が更に緊密になると同時に、日系社会の活性化にも繋がるものであります。
 2014年のワールド・カップ開催、2016年リオ・オリンピック開催と今後益々ブラジルは世界の注目を集めることになりますが、これら国際的行事開催に日系社会も大きく貢献してゆきたいと考えております。
 移民105周年にあたり、先人の御苦労を偲び、併せて東日本大震災で失われた方々を心に留め、心からご冥福をお祈りします。
 最後になりましたが、日系社会の皆様、ニッケイ新聞をご愛読の皆様のご健勝を祈念し、ブラジル日本移民105周年を迎えるにあたり私の挨拶と致します。