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日本文化の特質伝える=日伯文化連盟 理事長 中谷 アンセルモ

ブラジル日本移民105周年

ニッケイ新聞 2013年6月15日

 私は最近、日伯文化連盟理事長として、また古河電工ブラジル法人前社長としてNHKよりインタビューを受けました。
 この番組はブラジルについての特別番組でした。製作の第一の理由は、今年がブラジル日本移住105年にあたり、戦後移住も60年の節目の年にあたるためです。そして、第二は日本の最重要課題、即ち三十年間途絶えていた日本からの巨額の直接投資に関連するからでしょう。
 取材記者はブラジルが日本の投資家に絶好の機会を提供することができることを日本の視聴者に、はっきりと伝えたかったようです。
 当地には150万といわれる日系人が住んでいます。そして日系人は勤勉で、信頼がおけ、それ以上に道徳面でも素晴らしい評判を勝ち得ています。それ故、疑いなく、ブラジル人は地球の反対側からやってきた文化も習慣も異なる日本人を完全に受け入れたのです。このことは当地に投資する多くの日本人や居住することを決めた人々には、とても重要なことと言えるでしょう。
 それ故、私は中・長期の視点から、日本企業での就労体験者である出稼ぎ者をふくむ日系人は、ブラジル社会に於ける日本人とその子孫と人口の99%を構成する他民族との最大限、融合の橋渡しをすべきだという考えを述べたかったのです。
 言い換えれば、日本人は日系社会だけで他民族社会と孤立した生活をしてはならないのです。三世の40%、四世の60%が日系人以外と結婚しており、このことが同人種間の結婚を選択しないことが自然な傾向であることを裏付けています。
 すでに進出している日本出資による企業はもちろん、今から進出する日本企業は特にC・Dクラスの消費者層の成長を考慮しながら、当国市場で強力に活動する必要があります。以上のことがインタビューでお話したかったことです。
 この話に関連して、日伯文化連盟は重要な役割を持っています。57年の歴史がある当連盟はコロニアの中で唯一、ブラジル人—詩人ギレルメ・デ・アルメイダ—によって創立され、ブラジル文化と日本文化の融合の強化を目的にしています。当連盟定款では理事会メンバー構成に非日系人登用を義務付けています。当連盟の学習者は日本語だけを学ぶのではなく、日本文化や残念なことに、現代の若者たちにはあまり省みられないことですが「礼儀」—行儀や躾—なども習います。
 当地青年層の雇用機会が、ブラジルへの投資拡大とともに日本企業でも生まれることでしょう。ブラジル人労働者、必ずしも日系人である必要はありませんが、日本語ができたら、高品質な製品を生み出す企業方針、規律や遂行に対する責任ある態度を理解でき、それらは企業におけるキャリア上の成功のための基本的な要素となるでしょう。
 一方では、これらの品質を生み出す彼らはブラジルに設立された日本企業の成功の基盤となるでしょう。また新投資によるブラジルに住む日本人は当日伯文化連盟でポルトガル語を学ぶことができ、日系人に頼ることなく一般社会にとけ込むことでしょう。
 約50年後には当日伯文化連盟は創立100周年を、またブラジルの日本移民は150周年を迎えます。できることなら、今以上に、数千年にわたる日本文化の特質を失うことなく広汎なブラジル文化と日本文化の融合が達成されるならば、日伯文化連盟理事らの手弁当の働きが報われることとなるでしょう。