ニッケイ新聞 2013年6月21日
6日にサンパウロ市とリオで起きたバス料金値上げに反発するデモが、17日には全国で25万人を動員するほどになり、18日にはサンパウロ市役所攻撃などにも発展という一連の問題を受け、ジェラルド・アウキミンサンパウロ州知事、フェルナンド・ハダジサンパウロ市長は19日、24日から同市のバス、メトロ、電車の料金を3・2レから3レに戻すと発表した。20日付エスタード、フォーリャ両紙などが報じた。
一連のデモの影響で、サンパウロ市だけでなくリオ市でもバス代を2・95レから2・75レに下げるほか、全国の複数の都市(エ紙は7市、フ紙は6市と報道)で料金引下げが決まった。
デモで掲げられていた汚職、コンフェデ杯やW杯への反発、医療や教育の充実など、複数の主張の内、具体的な要求として叫ばれていた公共交通機関の料金引き下げについては民衆側の勝利という結果に終わったが、既に国全体の問題に発展しているデモがどのように変化するのか、20センターボの引下げが経済にどのような影響を与えるのかが注目される。
サンパウロ市ではパウリスタ大通りには19日夜、「私はブラジルを変えるためにここにいる」「料金は下がった。でも民衆は黙らない」「大事なのは日々闘い続けること」「これは単なる始まりに過ぎない」などと書いた看板を掲げた人々約1千人が集まり、祝杯ムードで歓声を響かせた。
一方、デモの火付け役となったMPL(無料乗車運動)は、「3レアルではダメ! 我々は無料を望む」とし、これからも運動を続ける意向だ。代表者の一人は、「政治家や企業に頭を下げることなく、市民が外に出て声を上げたことで値下げが実現した。これは市民の力。これができたんだから、これからももっと色々なことができる」と鼻息荒く話している。
18日のデモであからさまな市民の拒否反応を目の当たりにしたハダジ市長が料金値下げに応じたのは、来年のジウマ大統領再選の妨げとならないよう、ルーラ、ジウマ両氏からプレッシャーをかけられたためとみられる。この決定は事実上、市民らの要求に屈したもので、市長自身は「ポプリスタ(大衆迎合)的なやり方」との言葉で、不満の意を表している。
「この措置に伴う犠牲は大きい。公的投資の削減は避けられなくなる」と述べ、アルキミン州知事も「この値下げによって生じるコストは、どの企業でもなく、州の公庫よってまかなうほかない」としている。
20センターボを徴収できないことで、サンパウロ市予算からの持ち出し額は今年だけで約2億レ増えるほか、州政府もメトロ、CPTM(パウリスタ都電公社)への投資が年間2億1千万レ必要となる。ただし、6、7月のインフレは0・21%ポイント緩和される。
19日はサンパウロ市セントロでのデモはなかったが、サンパウロ市郊外やABC地区、ベロ・オリゾンテ、セアラー、マラニョン、リオ州内などでデモが決行されており、全国のデモの火はまだまだ消えそうにないようだ。