ニッケイ新聞 2013年6月26日
【既報関連】ジウマ大統領が24日、全国の州知事27人と州都市長26人を招いて全国に広まった〃抗議の波〃への対応策などを話し合い、国民投票や制憲議会開催なども含む5つの公約を発表したと25日付エスタード紙、フォーリャ紙などが報じた。
6日のサンパウロ市で始まった公共交通機関の料金値上げに反対する150人規模の抗議行動が、20日には全国で125万人に及ぶ〃抗議の波〃に発展した事を受け、ジウマ大統領が24日、全国の知事や州都市長らに五つの公約を提示した。
ジウマ大統領が〃抗議の波〃は国政に及ぶものと気づいて特別な反応を示したのは、20日に発表されたサルバドール訪問と訪日中止が最初だ。同日の大統領府は警備の兵が2重の人垣を作り、外務省や中央銀行の建物がデモ隊の被害を受けるなど、抗議行動は一段と激化。21日にはデモ収束を図った演説を行い、一連のデモは「民主主義の力を象徴」するもので民衆の声を聞く準備がある事や、全国の知事や市長と協力して公共サービスの質の改善をする事などを約束した。
24日の会議はこの約束を実行するための第一歩だが、そこで提示された公約は疑問や懸念の声で迎えられたようだ。
最初の公約は経済動向の監視と安定で、関係機関総出でインフレ抑制と公的支出の管理を行うと約束する一方、知事や市長にも料金引き下げなどの諸策を講じ、物価上昇を阻むよう求めた。
2番目は政治改革、3番目は医療機関の整備や外国人医師らの配置を含む保健行政の加速、4番目は減税拡大や500億レの投入、特別審議会設置などによる公共交通の質改善、5番目は石油生産に伴うロイヤルティを50〜100%教育に回す法案の承認などによる公的教育の充実だ。
特に目を引いたのは、汚職撲滅などを求める国民の声に応えた政治改革で、その方法は、国民投票と制憲議会開催という予想外のものだ。
国民投票は本来、連邦議会の承認後、選挙裁判所が6カ月以上かけて準備するものだ。賛否両論を戦わせる場や方法を規定しなければならず、莫大な経費もかかる。
他方、政界以外の人々からなる制憲議会は、現行憲法が役に立たないと判断された場合に憲法全体の改正を行うもので、構成員には全権限が託される。現行憲法では政治改革のためだけの限定的な憲法改正は認められておらず、最高裁判事らは皆、制憲議会開催は違憲との判断を示している。
この公約には与野党からも疑問が出ており、議会で論議を交わし、現行法の一部改正だけで足りるのに、何カ月もかかる国民会議と言い出したのは、国民の目をそらし、思惑通り動かない議会を刺激するためとの批判も出ている。政治改革については、犯罪歴のある政治家の出馬を制限したりするフィッシャ・リンパ法制定を働きかけた約70の団体が、〃レフォルマ・ポリチカ・ジャ〃の名前で150万人の署名を集め始めている。