ニッケイ新聞 2013年6月26日
デモ隊と大統領とのやり取りの、あまりの素早さに「次はそう来たか?」と驚きの連続だ。まるでセレソンのパスのように、あれよあれよという間に〃ゲーム〃が進んでいく。15日にコンフェデ杯が開幕してデモが激化し、21日夜に大統領がテレビ演説し、24日には全伯主要州知事と州都市長を呼んで提案をした▼その目玉が「行政が呼びかける国民投票での政治改革」=詳細は2面=だ。ジウマは議会での交渉に苦しんできた。「最近PT内でも孤立してきた」と解説する評論家もいるほどで、与党分裂で大統領法案が承認されない状態が頻発していた▼とくに難しいのは「政治改革」だ。国民が選んだ代表が集まる議会には権威がある。その〃偉い先生〃が自らの役割への監視を強め、自分の権力を弱めるようなことを喜んでやるか—との民主主義の根幹に関わる問題だ▼議論ばかりで政治改革が進まない中、今回のデモ隊の一部にダッタ・フォーリャが調査したら、30%が大統領候補にバルボーザ最高裁長官(司法)を支持した。メンサロンを厳しく処した人物だ。汚職まみれで自浄作用を持たない両院(立法)、それに手をこまねいている大統領府(行政)という構図に対し、「いい加減にしろ」というデモ隊の意図は明白だ▼それを受け、「国民投票で政治改革」とのジウマ提案になった。問題は、国民投票の承認権は議会にしかなく、政治改革のための国民投票を提案すること自体が違憲との話がある点だ。だが、84年デモで大統領直接選挙が実現された流れからすれば、その大統領が提案して国民投票を積極的に国政に取り入れるのは「ブラジル型民主主義」の成熟かも。(深)