ニッケイ新聞 2013年6月28日
「息子の死がブラジルを変えることはない」—。コンフェデ杯準決勝のブラジル対ウルグァイ戦があった26日、会場となったミナス州ベロ・オリゾンテのミネイロン・スタジアム周辺で起きたデモで、軍警とデモ隊の間で起こった混乱で、高架橋から転落して死亡した青年の母親の言葉だ。27日付フォーリャ紙などによると、全国に広がるデモでの犠牲者はこれで5人目となる。
死亡したのは21歳のドウグラス・オリベイラさんで、母親のネイジさんはグローボの取材に対し、「抗議で政治家の汚職は変えられないし、バス料金が5センターボ安くなることもない。(息子の死は)私の人生を変えただけ」とのコメントを寄せている。
同じ高架橋からはもう1人転落したが、意識がある状態で病院に運ばれた。問題の高架橋は同市パンプーリャ区のアントニオ・カルロス、アブラニョン・カラン両大通りの交差点上にあり、デモによる混乱では、オリベイラさん以外に少なくとも5人が転落している。
26日のデモでは、少なくとも26人が公共物破損の疑いで拘束され、9人が負傷した。
同日午後のデモ参加者は5万人で、当初は平和な雰囲気の中、「衝突は無し!」と叫びながら8キロを行進したが、スタジアムに接近した午後3時半頃に混乱が起きた。
一部参加者が柵を破って警官に爆弾や材木、石などを投げ始め、ガソリンスタンド、自動車販売店、銀行、自動車部品店などを攻撃、放火。ある車販売店の被害額は300万レにも及んだ。
同日は17州都などでデモが発生。ブラジリアではエスプラナーダ広場周辺に軍警4千人に警察車両、騎馬隊、警察犬、ヘリコプターなどを配備して厳重な警備体制を敷き、デモ参加者の所持品検査も行ったが、午後9時頃、一部デモ隊が花火などを投げつけ、軍警側も数十発の催涙ガス弾を発射。少なくとも20人が拘束された。