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工業製品税は段階的に戻す=9月まで一段階置く=政府はインフレ上昇懸念=経済成長見通し下方修正

ニッケイ新聞 2013年6月29日

 ジウマ大統領が24日に発表した公約の一つである公共支出抑制との関連で、7月1日より、白物家電などに対する工業製品税(IPI)の減税措置が段階的に解除されると28日付エスタード、フォーリャ両紙が報じた。今月で終了するはずだった減税措置が段階的解除に変更された背景には、インフレ上昇への強い懸念が働いている。

 ジウマ政権の経済政策への不信感が募っている中、マンテガ財相が白物家電や家具への減税縮小を発表した。経済活動刺激策として2009年から続いた減税措置は、大幅な税収減少などを解消するため、少しずつ解除されている。
 経済活動の減速化などで、政権初年からの国内総生産(GDP)の伸び率が2・7%、1・9%と振るわないジウマ大統領にとり、今年の経済成長率やインフレ率は来年の大統領選挙を占う鍵となるが、もう一つ大切な基礎的収支のバランスを保つために必要なのが減税措置の解除だ。
 今月初めから始まった〃抗議の波〃は国民の不満の表れで、不満の一つはインフレ上昇や所得の伸び悩みとされている。そういう意味で、税収が増える一方、価格上昇につながりかねない減税措置解消は両刃の剣だ。
 そこで、国民の不満を更に煽り、大統領選に不利な条件を作りたくないジウマ大統領らが選んだのが、7〜9月のIPI課税率にワンクッション置く、段階的減税解除という方法だ。マンテガ財相は27日、課税率引上げで7〜9月の税収は1億1800万レアル増えるという見通しと共に、増税分は製造業者と販売店が吸収努力を行い、消費者価格には響かせないとの公約を発表した。
 一方、中銀は同日、今年のインフレ予想を5・8〜6%、2014年の予想も5・2〜5・4%に上方修正。経済成長見通しは3・1%が2・7%に引下げられた。
 中銀の予想は6月7日までに集めたデータをもとに行われたが、このままの傾向が続けば、インフレは昨年の5・84%以下、14年も5%以下にするとの中銀総裁の約束や、経済成長は政権初年の2・7%以上にとのジウマ大統領の約束は遂行困難となりそうだ。
 また、インフレ予想試算の際、サンパウロ市やリオ市などの公共交通機関の料金引下げも反映させる努力をした一方、為替は1ドル=2・10レアルを基準とするなど、少しでも低めの数字をはじき出したとの情報がある。インフレ予想の上方修正で、経済基本金利(Selic)引上げは2回ではなく3回、または引上げ率引上げといった予想も出始めたようだが、新しい予想は意図的に操作して算出したという事になれば、せっかく回復してきていた中銀への信頼感が低下しかねない。
 ジウマ大統領やトンビニ中銀総裁は「インフレは抑制できている」と言うが、〃抗議の波〃で不安定感が増し、経済的な損失も出ている中、所得や雇用、インフレに対する懸念解消は容易ではなさそうだ。