ニッケイ新聞 2013年7月4日
エイケ・バチスタ氏率いる石油・天然ガス開発会社のOGXが1日、2014年でカンポス沖での石油生産を停止すると発表した事で、OGXを含むEBXグループの株価が軒並み急落。格付会社も格付引き下げなど、エイケ王国の信用はがた落ちとなり、取引銀行やペトロブラスなどの株価まで下落したと2、3日付エスタード、フォーリャ両紙が報じた。
米国のフォーブス誌が2012年5月2日に発表した億万長者リストで世界7位にランクされ、2015年には世界一になると豪語していたエイケ・バチスタ氏が、〃エイケ王国〃崩壊の危機に直面している。
ヴァーレ・ド・リオ・ドッセ社長や鉱山動力大臣も務めたエリエゼル・バチスタ・ダ・シウヴァ氏の息子でドイツ人の母を持つエイケ氏は、1956年ミナス州生まれ。欧州で教育を受け、葡、独、英、仏、西の5カ国語を話す同氏は、リオ五輪招致のスポンサーで、グループ傘下のIMXを含むコンソーシアムがマラカナン・スタジアムの運営権獲得など、羽振りのよさを誇っていた。
ところが、2010年10月15日には1株23・37レアルを記録したOGX株価が、2日には0・40レアルに急落する事態が発生した。
鉄鉱石や石油などの地下資源開発の他、エネルギーや輸送、造船、都市開発なども手がけるEBXグループは、国内外の投資家の関心を集め、株式公開で資金を調達。最大手のOGXは、カンポス沖などの油田開発に力を入れ、新油田の入札などにも積極的に参加してきたが、1日に、トゥバロン・アズル油田を含む4カ所の油田が商業的に採算性がないため、14年に同油田の生産を停止すると発表した。
OGXは12年6月、元理事が同社の生産見通しを縮小すると発表して更迭された事があるが、同年7月の日産量は前月の8千バレルから6千バレルに減少。フィッチとムーディーズが同社の格付を負債が払えなくなる可能性ありのBランクに下げたため、1週間で株価が21%下落した。
エイケ氏は同年10月に14年までにOGXの新規発行株10億ドル分を買うと約束して市場の沈静化を図ったが、2013年1月の長者番付は75位に急落。OGXの石油生産量は13年2月には日産3800バレルに落ち込み、同3月発表のエイケ氏の番付は100位に下降。極め付けがトゥバロン・アズルでの生産停止宣言で、スタンダード&プアーズとムーディーズが2日、同社格付を債務不履行寸前のレベルに引き下げた。ムーディーズは4月、6月にはフィッチも同社の格付を引き下げている。
同社の資金は社会経済開発銀行(BNDES)などの融資が中心で、その額はBNDESが48億8800万レ、連邦貯蓄銀行が13億9200万レ。1〜2日の株式市場ではEBX各社株が5〜30%、ブラデスコやイタウなどの民間取引銀行株価も2日に4・32〜6・2%下落した。同社では8月までに国家原油庁(ANP)に1億8800万ドル、OSXにも油田開発用の採掘船建造費4億4900万ドルを払う必要があり、生産が順調な油田株売却やエイケ氏の資産投入などの思い切った策を採っても全てを賄えない状態だ。