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FLIP2013=開会式でアトウムが講演=グラシリアーノを語る

ニッケイ新聞 2013年7月5日

 3日にリオ州パラチーで開幕した「第11回パラチー国際文学祭」(FLIP)。現代ブラジル文学界では著名な作家の一人で、エスタード紙文化面のコラムニスト、ミルトン・アトウム(60)が、今祭典のメインテーマ作家グラシリアーノ・ラモス(1892—1953)をテーマにオープニング講演を行った。
 「彼の社会への批判の視点が、今回の祭典のインスピレーションとなった」。グラシリアーノ・ラモスは、アラゴアス州生まれ。北東部の過酷な生活を描き出した代表作『乾いた生活』(Vidas Secas、1938年)で知られる近代主義期の作家だ。「サボテンのように厳しい人だったことで有名だが、文学には人間らしい一面を見せていた」「主観と客観を融合させ、ブラジルのあらゆる社会問題を文学に反映させた彼の手法には、いつも魅了されてきた。当時の全ての作家に影響を与えていた」とアトウムは語る。
 特に、当時の教育制度に対しては強い問題意識があった。作品には、教養がある人と非識字者との間に起こる諍いが幾度となく描かれているという。
 1920年代の末、パルメイラ・ドス・インディオス市(現在はアラゴアス州第三の都市)の市長も務め、政治家としても「模範的」(アトウム)な働きをしたことでも知られている。
 ミルトン・アトウムはアマゾナス州出身。レバノン移民の子孫で、同州連邦大学、カリフォルニア大学で文学を教えた。作品群は国内で20万部を売り上げ、イタリア、米国、フランス、スペインなど8カ国語に翻訳されている。
 軍政時代を批判する作品を書いたこともあるアトウムは、先月中旬から全国的なデモが起こっているブラジルの現状について、「ブラジル人は、市民権を得られないまま消費者になった。だから教育や公共交通、医療への権利が享受できていない。バス賃をめぐる闘いは、質の高い生活をめぐる闘いに変わった」と語っている。(4日付エスタード、フォーリャ両紙などより)