ニッケイ新聞 2013年7月5日
ボサノバの代名詞のような存在で、日本でもファンの間ではよく知られる歌手でギタリストのジョアン・ジルベルト(82)が、自身の伝記本『ジョアン・ジルベルト』(ウォルター・ガルシア著、2012年、512頁)の回収を求めて訴えを起こしており、第二審で訴えが再び棄却された。4日付エスタード紙が報じた。
「本の内容は、自分のイメージとプライバシーを侵害するもので、名誉毀損。取材対象者の自分が、許可していない部分の人物描写がある」とジルベルトは主張する。
同書は四つのパートから成り、ジルベルト本人へのインタビュー、親しい間柄だった歌手の故ドリヴァル・カイミ、詩人の故ヴィニシウス・デ・モライスなどの証言のほか、書き下ろしのエッセイや評論文などが収録されている。
サンパウロ州高等裁判所第9民事部のヴァルジール・ケイロス・ジュニオール判事は判決文で、「現在のブラジルの憲法では、検閲行為とみなされる文学作品の押収は一切認められていない。強制的に回収することは、第三者が作品の内容を知ることを妨げる行為。それは立派な検閲」とのべている。
同判事によれば、著者のイメージと名誉を守るには作品回収ではなく損害賠償の支払いという形を取ることになり、それも憲法で定められているという。