ニッケイ新聞 2013年7月6日
ジウマ大統領が公約した石油生産に伴うロイヤルティを100%(岩塩層下の石油では50%)教育に投資するという案は、下院審議で75%を教育、25%を医療関係に投資と修正されていたが、2日夜の上院はその投資額を更に62%削減した。5日付エスタード紙が報じた。
下院案で2790億8千万レだった両分野への投資額は、上院で62%減の1081億8千レとなった。具体的には教育への投資が2093億1千レから974億8千レの53%減、保健医療へは697億7700レから107億レの84・7%減となった。
専門家は「国民の要求に逆行」と指摘する。全国規模のデモで、連邦政府は教育への増資を約束し、下院も2020年までに教育への投資額を国内総生産(GDP)の10%までにする案を可決したが、下院でのロイヤルティ分割案で2022年までの教育投資は現行の5・8%から1・1%増の7%に止まった。
ところが上院は、ロイヤルティから挙がる社会基金(Fundo Social)全体の50%を教育と医療にという下院案を、同基金から上がる「利息」の50%に修正し、大幅な投資額減額を招いた。この修正で教育への投資は0・4%の伸びとなる。専門家のルイス・アラウージョ教授は「これまでは多少進歩があったが、振り出しに戻ってしまった」と指摘する。
教育の権利を求める全国キャンペーンのダニエル・カーラさんは、「下院は国民の圧力で法案を可決したが上院は政府の利害に動かされた」「国の経済基盤に負担をかけたい訳ではない。教育に投資しても国の財政は破綻しない」と主張する。
ブラジルの教育投資は先進諸国より極端に少ない。ゴイアス連邦大学ネルソン・カルドーゾ・アマラル教授によれば、学生一人当たりの年間投資額は、米国8816ドル、日本7862ドル、ポルトガル5592ドル、韓国5446ドルに対し、ブラジルは959ドルで、現在のPIBの10%を2040年まで投入し続けなければ先進国なみの投資額に達しないという。
この上院の修正案は、来週にも下院で再び審議される見込みで、その後は大統領の裁可となる。