ニッケイ新聞 2013年7月9日
戦争体験の語り部として、日本の子どもたちに戦争を語り伝えているブラジル移民、上江洲清さん(74)=兵庫県尼崎市在住=が、永住権維持のため一時帰国中だ。
両親は沖縄県うるま市出身。1939年、南洋諸島の一つテニアン島で生まれた。戦時中を振り返り、「5歳の時、引き上げ船に乗って沖縄に向かう途中、米軍の攻撃に遭って船が沈没した。救命ボートで沖縄に漂着し、九死に一生を得た」と語る。激しい地上戦が続く中、「こわいよう、こわいよう」と泣き叫びながら戦場を逃げ惑った幼児期の体験は、子どもたちの心を打つ。
1958年、高校卒業と同時に渡伯し、7年ほどコーヒーや陸稲栽培に従事した。後に亜国ブエノスアイレス米国ロサンゼルス、ハワイ、沖縄、ブラジルなど海外諸国を転々として40年になる。
再び訪日し、滋賀県湖南市でブラジル人の住むビルの管理を担っていた上江洲さんの下に、平和学習を推進する地元の小学校から講演の依頼が舞い込んだのが2004年。学校から学校へと評判は広まり、関西一円から講演に呼ばれるようになった。「同じ年代の頃の生の体験談に、子どもたちは『自分だったらどうするか』と興味を持って反芻しながら聞いてくれる」と手ごたえを感じている。
また昨年は、自伝『戦場の小さな証人—太平洋上と沖縄での戦争体験』も上梓した。