ホーム | ブラジル国内ニュース(アーカイブ) | ジウマ=医療改革の政策を発表=医大課程を6年から8年に=SUS中心に医師を増員=具体性なく医師団体は批判も

ジウマ=医療改革の政策を発表=医大課程を6年から8年に=SUS中心に医師を増員=具体性なく医師団体は批判も

ニッケイ新聞 2013年7月11日

 ジウマ大統領は8日、ブラジルにおける医師数増強や、医師免許の規定の変更を定めたプロジェクトを発表した。新しいプロジェクトでは、医大生の教育期間をこれまでの6年間に医療現場での研修期間2年を加えた8年にすることなどを規定しているが、早速賛否両論を招いている。9日付伯字紙が報じている。

 「マイス・メージコス」と称する政策は、6月に起きた全国規模のデモで大きな争点となった「医療改善」をとの国民の要求に応えたもので、強調点は、2017年までに全国で1万1447人分の医大の定員拡大と、需要の高い診療科目での専門研修医枠の1万2376人分増強だ。
 この政策は、医大生が医師免許を取得するまでの課程の変更を規定している。ブラジルの場合、医大に6年間通った後に医師資格が与えられることになっているが、この変更で、従来の6年に加えて公共医療機関での2年の研修が義務付けられることとなる。1年目は保健所などのアテンソン・バジカ、2年目は緊急医療機関での研修となる。
 延長分の2年間は医大生には学費支払いの必要がなく、全て国からの奨学金で賄われる。奨学金の額は現時点では不明だが、1人につき毎月3千レアル〜8千レアルになるのではないかと見られている。政府はこの医大の教育期間延長を2015年度から導入したいと考えている。
 この「マイス・メージコス」を通じて、政府は医師数の不足している統一医療保険システム(SUS)の医師の補充を行う意向だ。現在、SUSなどの基礎医療での医師不足はもっとも深刻で、この部門はジウマ大統領が6月のテレビ演説で公表し、賛否両論を招いた外国人医師の補充先にもあげられている。
 政府は、新システムによる最初の医大7年生が生まれる2021年にSUSに現状の2万人増の医師数増加を見込んでいる。政府の意向としては、人口1人あたりの医師の数が0・5人と少ないパラー州などの北東伯や北伯などで医師を増やすことを望んでいる。
 このシステムは英国でとられている制度を参考にしたもので、医療機関の今後の検討次第では、医大の最初の6年の教育期間は5年に短縮される可能性もあるという。この政策に対し、心臓医で元保健相のアジブ・ジャテネ氏は「専門医の質の向上が図れる」と語り、サンパウロ総合大学(USP)の泌尿器科のミゲル・スロウギ教授は「理論的には完璧」と語っている。だが、この両医師共にこの政策に明確な形が見えていないことを指摘している。
 また、今回のジウマ大統領の発表に対し、多くの医療団体が「寝耳に水の発表だ」と驚きを隠さない。団体の代表たちは「これでは医師の勤務先が決められてしまい、勤務地選択の自由が失われる」「大学側の予算が明確でない」「大統領選挙を意識したその場凌ぎの人気取りに過ぎない」と反論し、訴訟も辞さない構えを見せている。
 この政策は暫定令(MP)のため、180日以内に議会で審議、承認される必要がある。