ニッケイ新聞 2013年7月11日
米国家安全保障局(NSA)による個人情報収集プログラムの存在を米中央情報局(CIA)元職員のエドワード・スノーデン氏が暴露し、世界中に驚きが走った後、ブラジルがラ米諸国での情報収集活動の拠点でもあった事などが明らかになり、ジウマ大統領が8日に「国家の主権と個人の人権の侵害」と抗議、五つの省庁からなる特別対策室も設置するなど、具体的な対応が始まっている。8〜10日付フォーリャ、エスタード両紙などが報じている。
モスクワに居るスノーデン氏がエクアドルなど20近い国に亡命を求めている事は国際的にも知られ、ロシア訪問後のボリビアのエヴォ・モラレス大統領の専用機が、スノーデン氏同乗の疑いで2日にフランスなどの領空通過拒否を受けた事は4日付伯字紙が報じた。
これに反発した南米諸国首脳や閣僚は4日に南米諸国連合(ウナスル)の会合を開いたが、その後、米国の諜報活動はブラジルやラ米諸国にも及んでおり、中でもブラジリアは、インドのニューデリーなどと並ぶ世界16カ所の情報収集拠点のひとつであった事などが明らかになった。
ブラジルのグローボ紙やG1サイトが6〜8日付で報道した内容などによると、NSAの主な関心事はエネルギーや石油、軍備などで、NSAとCIAは少なくとも2002年までブラジリアに拠点を置いて諜報活動を実施。それ以降は確たる証拠がないものの、宇宙衛星や海底ケーブルを介した情報なども含む大量の情報が収集されていた。電話やインターネットなどを介して集めた情報は米本国に次ぐ23億件とされ、ブラジルを拠点として集められた個人や企業の情報の中には、イランや中国など、情報が集めにくい国に関するものも含まれていたという。
02年の時点で特別収集サービス(SCS)の担当者が派遣されていた場所は65カ国の首都を含む75都市で、ブラジリアとインドのニューデリーでは衛星を使った情報収集活動も本格的に行われていたという。
ブラジルでも諜報活動が行われていた事に対し、アントニオ・パトリオッタ外相は7日に米国に説明を要請。8、9両日は外務省にトーマス・シャノン駐伯米国大使を招き、事情を聴いた。連邦警察や国家電気通信庁(Anatel)も8日から事実関係解明に乗り出し、9日には、外務省と法務省、国防省、通信省、大統領府安全保障室からなる合同対策室も設置された。同室ではこれほど大量の情報が流れた方法やルートの解明と共に、技術者を動員して安全対策とインフラの見直しなどを行う。上院も関係閣僚やシャノン大使、リオ在住で同件を報道したガーディアン紙記者からの事情聴取を行う構えだ。(つづく)