ニッケイ新聞 2013年7月11日
2008年の百周年時には、多くの記念事業が行われた。できるかぎり取材に行ったし、写真、手紙などで寄せられた情報を元に記事化したものも多い。まあよくもこれだけ—と嬉しいやら呆れるやらというほど、各地で日伯友好の百花繚乱といった感じだった▼1回だけの一過性のものも多いだろうし、記念プラッカが持ち去られたなど淋しい話も聞く一方、着実に続いているものもあるわけで、先日訪れたサンパウロ州アグアス・デ・サンタバルバラの「ハーモニーの森記念祭り」もそうだった。百周年時に作った公園を落成させ、祭りも毎年行われている▼多くの町で日本庭園が作られたわけだが、この町の日系人らは「日本にこだわらない庭園を」と様々な木々を植樹することで、移民国家ブラジルを表現した。そうした態度こそ、まさに日本人が美徳とする調和(ハーモニー)なだけに妙に感じ入った▼祭り自体は、人口6千人の町だけにささやかなものだった。「おら東京さ行ぐだ」ではないが、サンパウロからのバスは一日二本。温泉はあるが観光地化されておらず、何とものんびりした田舎町。雨にもたたられ人出は少ないものだった。それもあってか、教会の前の広場に響く琴の音はなかなかに風情のあるものだった▼市としても祭りを盛り上げたいようなのだが、その術を知らないといった様子だった。こうした動きにコロニアが対応できる仕組みができればいいのだが—と、これだけは絶対にあるヤキソバを頬張りながら思ったものだ。華やかではないが、こうした地道な動きも紙面で紹介していければと、百周年から5年目を迎えた今年、改めて思った。(剛)