ニッケイ新聞 2013年7月12日
かねてから問題となっていた、学生証を使ってのコンサートや演劇、スポーツ・イベントなどへの入場が9日、販売する券の枚数の40%までに制限される法案が下院本会議で可決された。同法案は既に上院でも可決されているため、向こう15日以内にジウマ大統領が裁決し、そこで問題がなければ半年以内に実施されることとなる。
ブラジルでは学生や高齢者(60歳以上)にはコンサートや演劇、映画、スポーツ・イベントでの半額入場が認められているが、ここ数年、半額チケットの入場者の多さが問題視されていた。
というのも、近年では学生証の発行数が増え、不正使用が疑われるものが横行している。現在の半額入場者の割合は、映画で65%、演劇で70%、コンサートで80%となっている。ところが、観客がこれらの数字通りに学生や高齢者で構成されているとは思えず、加えて半額チケットでの売上で収益が出ずに財政的に苦しむコンサート興行主も少なくない。
だが、入場者側としても、例えば国外から訪れる人気歌手の公演の場合、特等席が最高800レアル(約3万5千円)、一番安い席でも200レアル(約8500円)など、日本での基準で考えても高い価格(日本での国外歌手の公演だとアリーナでも最高1万円前後で、ホールやライブハウスだと5〜6千円)がつけられている。そのため、半額での購入しないと財政的に厳しいという実情もある。ましてやブラジルのコンサート・ビジネスはここ数年、過去に前例のないほどの国外歌手・バンドの来伯ラッシュでもある。
そうした実情を反映する意味で、今回の法案では、半額チケット購入の上限を設ける代わりに、販売価格を現状より20〜30%下げる提案も同時に行われている。だが、「興行側が価格を下げるとは思えない」「誰が販売価格の管理を行うのか」といった問題が残っている。下院で行われた報告に従うと、現時点では消費者保護センター(PROCON)が適正価格の管理を行うとの見方が有力だが、定かではない。
ブラジルの場合、学生証の発行は通常の小学校〜大学にとどまらず、語学教室などでも可能なため、この問題は日本からブラジルに来てポルトガル語を習っている人たちにとっても無関係の話ではない。