ニッケイ新聞 2013年7月17日
ドイツの多国籍企業シーメンスが、サンパウロ市とブラジリアの地下鉄やパウリスタ都電公社(CPTM)の事業入札でカルテルを行っていたことを認めた。14〜16日付伯字紙が報じている。
カルテルとは企業間で事前に価格や生産数量などに関する協定を結ぶことで、独占禁止法の対象となる。14日付フォーリャ紙によると、シーメンスはサンパウロ市とブラジリアの地下鉄とCPTMの建設や運営権取得、資材購入のための入札の際、いくつかの企業とカルテルを行ったことを認めた。その企業の中にはフランスのアルストンやカナダのボンバルディア、スペインのCAF、日本の三井といった世界的企業の名前も含まれている。
シーメンスが経済防衛行政審議会(CADE、日本の公正取引委員会に相当)に提出した報告書によると、カルテルがあったとされるのは少なくとも六つの入札で、シーメンスは今回の情報提供で、カルテルの存在が確認されて処罰が行われたとしても、処分を免れることが保障されている。入札カルテルは1998年からはじまったと見られ、シーメンスは2008年にブラジルでの贈賄容疑でドイツ国内での調査も受けている。
もしシーメンスが認めたようなカルテルが実際に行われていたならば、入札額には自由競争であった場合の価格の10〜20%が上積みされていたと見られる。
地下鉄5号線の入札に不正があったことは2010年頃から報じられており、今月初旬には連邦警察とCADEが捜査に入ったことも伝えられていた。
不正入札が疑われているのは、サンパウロ市地下鉄5号線のカッポン・レドンド駅〜ラルゴ13駅間の建設工事、同2号線アナ・ローザ駅〜アルト・ダ・イピランガ駅間の拡張工事、CPTMの2000番と2100番の電車の保守、CPTM3000番の電車導入契約、CPTMの車両保守改善のための「ボア・ヴィアージェン」プロジェクトと、ブラジリアの地下鉄運営の6件だ。現在のところ、13の企業に対し、カルテルに絡んだ疑惑が持たれている。
ジェラルド・アウキミンサンパウロ州知事は15日、このカルテル発覚を受け、補償を求める意向だと発言した。
また、今回シーメンスにより名前を暴露された企業はいずれも、8月に行われる予定のリオ〜サンパウロ市〜カンピーナスを結ぶ高速鉄道(TAV)の技術関連での入札への参加の意思を表明している。現在のところ、シーメンスを含む6社以外でTAVの入札に参加できる技術力を持つ企業は5社にも満たず、その中で強い関心を示しているのは韓国の現代ロテム社のみとされている。