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貿易収支赤字は20億ドルか=輸出業者ら見通し修正=コモディティ値下がり響く=中国経済減速化の影響は

ニッケイ新聞 2013年7月19日

 ブラジル貿易会(AEB)が17日、今年の貿易収支は20億ドルの赤字で終わるとの見通しを発表した。18日付エスタード、フォーリャ両紙によれば、2012年末は146億ドルの黒字と予想していた同会が、1998年以来の大幅な赤字予想に転じた背景には、コモディティ価格の低下や中国経済の減速化が大きく影響している。

 AEBは国内の貿易業者やその下請け業者などからなる組織だ。貿易の実態を肌で感じる同会が出した収支見通しは、通商研究センター(Funcex)が先週出した45億ドル黒字という予想を大きく書き換えた。
 Funcexは当初130億ドルの黒字という見通しを立てていたが、先週、その見通し額を45億ドルの黒字と書き換えた。だが、その後、今年上半期の貿易収支が30億ドルの赤字となった事が判明するなど、新しい判断材料が浮上し、更に厳しい見通しを打ち出したのがAEBだ。
 年末時点のAEBの見通しは、輸出が12年比1・2%減、輸入が0・9%増、差し引き146億2千万ドルの黒字だったが、今回は、輸出が昨年比5%減の2305億1100万ドル、輸入が4・2%増の2325億1900万ドルと大幅修正。国際的な経済状況が悪化すれば、差が更に拡大する見込みだ。
 ブラジルの貿易収支は2000年から黒字続きで、年20億ドルの赤字という予想は12億9千万ドルの赤字だった1999年以来。同年の赤字はアジアやロシア、メキシコの経済悪化による景気の冷え込みに起因し、ブラジルでは97年に67億6千ドル、98年も66億2千ドルの貿易収支赤字を計上。今回の予想は98年以来15年ぶりの大型赤字見込みとなる。
 収支見通し下方修正の最大要因は原油やその派生品の輸出入バランスの崩れで、石油減産で輸出が38%縮小する一方、需要の拡大で燃料輸入が9%増大すると試算。燃料輸入増大は、ペトロブラスの輸入登録期間延長で12年輸入分の一部加算も影響している。
 もう一つの要因はブラジルの輸出の中心であるコモディティの価格低下で、中国経済の減速化や世界的な鋼鉄の在庫拡大で輸出が減少中の鉄鉱石価格は上半期の103・52ドル/トンが下半期は95ドル、原油も658・58ドルが600ドル、粗糖も451・11ドルが425ドルなど、下落傾向が続く見込みだ。一次産品は上半期に95億ドルの黒字を出したが、下半期の黒字は縮小すると見られている。
 また、ドル高レアル安傾向で追い風が吹くと見られる工業製品輸出も、輸出先の国々の経済状況が思わしくないため、コモディティの価格低下をカバーする程の伸びは期待できないようだ。
 AEBは、現時点の問題は価格低下だが、何らかの理由で輸出量低下が起き、赤字額が拡大する可能性も指摘している。為替については、インフレを懸念する政府が1ドル=2・25レアル程度に抑制するだろうが、工業輸出促進のためには1ドル=2・40〜2・50レアル程度が望ましいとしている。