ニッケイ新聞 2013年7月20日
23〜28日に開催されるワールドユースデーで初の国際イベントに出席する事になるフランシスコ法王は、質素・倹約がモットーなのは有名だ。おかげで、前任の法王らが使っていた豪華な赤い靴や金の道具もお蔵入り…。教会は民衆とより近くあるべきと考える新法王にとっては、華麗な金の道具や赤い靴、豪華な車は無用の長物と化してしまった。
財政悪化で悩んでいたバチカン市国にとっては大歓迎かもしれないが、その裏で、前法王のおかげで繁栄していた業者は、失業や減収の憂き目に会い、〝前法王が残した孤児達〟とも呼ばれているという。前法王まで御用達だった靴職人や商人、仕立て屋、市長までが減収などの問題に直面しているというのだ。
今回の来伯中も、使用する道具は金製を銀製に、宿泊先でも同伴者らと同様のシングルベッドを使用する、専用車のパパモーヴェルも防弾ガラスなしなど、関係者を別の意味で慌てさせる事柄が次々に起きているとか。御膝元のバチカンなどでは、前法王の時代を懐かしむ声が聞こえてくる。
その1人は、バチカンに程近い道路に店を構え、15年間、ベント16世らの靴を作り続けていたペルー人の靴職人、アントニオ・アレラノさんだ。赤い靴を見せながら、「新法王には自分が作った靴を履いてもらえそうもない」というアントニオさんも、ベント16世の〝孤児〟の一人だ。
法王用の服を作ってきた仕立て屋のガマレリ一家も、三つのサイズの服を用意していたのに、売れずじまい。祭儀用の品や飾り物などを作ったり売ったりする人々も、同じような憂き目に会っている。
もっと大変なのは、イタリア共和国ラツィオ州ローマ県にある、人口約8600人のカステル・ガンドルフォと呼ばれる町だ。法王の避暑用の山荘であるガンドルフォ城があり、法王の滞在中は観光客などが増える事で収入を得ていたのに、今年は法王が休暇は取らないと言い出して大慌て。せめて訪問だけでも願っているが、同市で店を構えているアルゼンチン人2人は「あの法王はいつもこうだった」と述懐。「うちに来てもいつも、目立たなくてシンプルなものを探していた」という。(19日付エスタード・デ・サンパウロ紙より)