ニッケイ新聞 2013年7月23日
【既報関連】連邦政府が提唱する地方や都市周辺部の医師確保のためのプログラム「マイス・メジコス」に定員以上の申し込みが集まる一方、スペイン人の医師が、情報不足で苦言を呈していると21日付エスタード紙が報じた。
ブラジルの医師不足は深刻で、サンパウロ州で2万4千人、全伯では16万8424人に上る。特に深刻なのは内陸部や都市周辺部で、小さな町では、医師が必要でも、医師を雇っておく、またはそこへ行こうと思わせるだけの額の給与を払うのが難しいケースも多い。
そこで打ち出されたのが「マイス・メジコス」で、3年契約で週40時間労働、月給1万レアルといった条件で募集をかけたところ、17日までに1万1701人が申し込みを行った。17日現在の申込者の中には外国の医学部卒業者が2335人、外国人医師も915人含まれている。
エスタード紙が取り上げたのは、スペインにいる医師達がこのプログラムにどのような反応を示しているかで、スペイン人医師とスペインで開業しているブラジル人医師の場合を紹介している。
スペイン人医師で関心を示している一例は、医学部卒業後の6年間、マドリードの保健センターで3カ月毎に契約更新という不安定な立場にいるアンジェラ・アウヴァレス・セラン氏だ。
経済危機に直面しているスペインでは、失業問題や就労条件改善の一手段として、ブラジル大使館や総領事館に問い合わせをしてきた医師が何百人もいる。だが、同国医師の多くは、派遣先が分からない事や施設は整っているか、薬品供給が速やかになされているかなどの情報不足で、申し込みをためらっているという。
バロス氏は、農村などへの派遣は構わないが、暴力事件が横行する都市周辺では働きたくないという。バルセロナ在住で39歳のモイゼス・モレノ・オルチス医師は、新しい経験が出来るのは魅力的としつつ、次の募集まで様子を見る意向だ。
また、イジドロ・リヴェラ・カンポス氏のように、5年後に定年退職してから行ってみたいという例もある。スペイン医師会はブラジル政府のプログラムを積極的に支援する意向だ。
一方、マラニョン出身でスペイン在住12年のゼウマ・バロス氏は、医学部卒業後6年目で、母国に帰国する機会が出来たと受け止めている。外国の医学部卒業者にブラジル教育省が課す国家試験の合格率は10%にも満たない事などで帰国をためらっていたバロス氏は、国家試験を受けなくても医師として働ける「マイス・メジコス」に強い関心を寄せている。
ブラジル教育省は今後、国内の医学部学生にも国家試験を課す意向で、移行のためのテスト試験が8月25日に実施される。