ニッケイ新聞 2013年7月23日
「先ほどIML(法医学研究所)から遺体確認をするようにと連絡がきました。まさかと思ったんですが…」。知的障害者施設「希望の家福祉協会」の大野孔三副理事長は22日午後4時半、声を落として編集部に電話をしてきた。
同日朝9時半、大野副理事長は上村惠ジャイロ理事長、事務局の上利クリスチーナ、担当者の奥原ヴァレリアさんと共に来社し、「行方不明になった園生を、全力挙げて探しています。皆さんも何か情報があればお知らせください」と呼びかけていたからだ。
希望の家では毎年、音楽療法を受ける園生が社会適応の一環として、県連日本祭りの中央舞台で楽器演奏を披露している。今年も職員10人に付き添われた園生29人は、20日午後3時の舞台を無事終えた後、客席で食事を楽しんでいた。奥原さんは「トイレに行く時も必ず職員が付き添った」という。
午後4時に帰るために点呼をして集団になって会場外のバスまで移動し、再点呼した時に吉野さんがいないことに気付いた。すぐに舞台前に戻ったがおらず、職員が手分けして1時間ほど会場内を探したが見つからないので、会場内の警察に失踪届けを出し、本格的に捜索を開始した。
この園生・吉野タカコさんはポンペイア出身の63歳、会話はポ語中心で所持金なし。身体傷害はないが会話に困難があった。
会場から無料バスが出ているジャバクアラまで職員が歩いて探し、付近のメトロ駅なども調べ、日系病院や近隣の病院にも連絡した。ジャバクアラ駅からバスが出ているジアデマ駅まで探しに行った。その晩は会場で夜中2時まで探し、翌朝から会場裏の森を環境警察に探してもらった。会場付近で顔写真付きの捜索ビラを撒き、同施設では24時間体制で電話情報を受付けていた。
22日午後に電話してきた大野さんは、「ジアデマ市エルドラド区で土曜晩に遺体で発見されIMLに運び込まれたそうです。我々が配布した捜索のチラシを入手して連絡してきた。シャツや靴下に名前が書いてあって、それが確認されている。本当に残念な結果になってしまった…」と声を震わせた。