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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2013年7月24日

 鳥居をくぐると、そこは別世界——。県連日本祭りは今年も盛況のうちに終わった。準備に関わった県人会諸氏に、心から「お疲れ様でした!」と言いたい。各ブースの〃故郷の味〃もさることながら、一生懸命に手伝っている多数の男女青年の姿を見たことが、何よりの眼福であった▼バンジTV局では連日、日本祭りのコマーシャルがバンバン流れていた。コロニア発の行事では珍しい。来場者側にも、日系人に「どうして日系社会は文化継承に成功しているのか?」と熱心に質問しているインテリ風ブラジル人、東北被災3県の写真展にじっと見入るブラジル人青年など、各々この場から刺激を受けている様子が感じられた。日本文化に親しみを持つブラジル人が多く生まれている▼食の広場では、暑い中でも黒い背広を着た護衛風3人組の厳ついブラジル人男性が額に汗を浮かべながら喜多方ラーメンをうまそうに箸で啜っていたり、中世の西洋貴族令嬢風ドレスをきた非日系コスプレ少女が手に讃岐うどんを持っていたり、日本祭り独特の風景が見られた▼ただ残念だったのは希望の家園生が行方不明になり遺体で発見された事件だ。再発防止に向け、関係者は最大限の努力をすべきだ。加えて今年もまた女性用トイレが足りず、長蛇の列ができていた。無料バスの列も長かった。駐車場入口に値段表示がなくて出口でいきなり30レアルは高いと感じるし、出口の方向指示もなかった。改善の余地はまだある▼とはいえ、会場を出た時に「日系社会が力を合わせば、これだけのことができる」と誇らしい気分になれることが、この祭り最大の収穫だ。一般社会へ貢献する行事として末永く続けて欲しい。(深)