ニッケイ新聞 2013年7月27日
2016年五輪のマラソンを、日伯模様の鯉のぼりで応援しよう—。鯉のぼり製造会社「徳永こいのぼり」(岡山県和気郡)の会長兼CEO徳永深二さん(66)が、先週末にあった日本祭りを視察した。持参したのは、表裏で日伯両国の国旗の色であしらった特製ミニ鯉のぼり。「ワールドカップがいいかと思ったけど、スタジアムに持って入れないんじゃないかと。それに、サッカーだと屋内だから映えないでしょう」。五輪のマラソンを目指した理由をそう語る。やはり、小さくても鯉のぼりが映えるのは屋外なのだ。
徳永さんは、リオ五輪のマラソンの応援に行くという日系人にその鯉のぼりを配り、沿道での応援で使ってほしいという。目標製作数は3千個。各300個を全国の日系団体10カ所に配る予定で、相談を受けた県連の園田昭憲会長が引き受けた。
徳永さんは初来伯だが、かねてからブラジルで日本独自の文化である鯉のぼりを広めたいと願っていた。日本祭りのことは、インターネットの動画サイトで映像を見て知っていたという。
学生移住連盟を通じ当地に数年住んだことがある男性と知り合いだったことで、そこから兵庫県ブラジル事務所の山下亮所長(69、兵庫)=パラナ州クリチーバ在住=につながり、相談を受けた山下さんが特製鯉のぼりの案を思いついた。
「緑と黄色の国旗の色を使った鯉のぼりなら、ブラジル人が大喜びするんじゃないかと思って」(山下さん)。世界中のメディアが集まる五輪なら、両国旗の鯉のぼりを持った集団が映像に移り、世界中の人に鯉のぼりを知ってもらえる可能性がある——そんなアイデアからだ。
そこで、徳永さんはさっそくデザインを作ってサンプルを試作、ブラジルに持参した。日本祭りに来ていた当地の関係者に感想を聞き、園田会長を含む何人かに感触を尋ねた。
五輪を皮切りに、将来的には本格的な鯉のぼりも当地で販売したい意向で、関心のある代理店を探しているという。
「たくさんの人にこの鯉のぼりを手にしてもらって、ぜひ集団になって応援してもらいたい」。ミニ鯉のぼりを手に、徳永さんは意欲的にそう話す。日本とブラジルの色であしらわれた小さな無数の鯉のぼりが、リオの青空に泳ぐ—。誰も見たことのない光景が広がりそうだ。