ニッケイ新聞 2013年7月31日
ワールドユースデーを終え、29日にバチカンに戻ったフランシスコ法王が「同性愛者であっても神を信じ神に仕えようとする人なら、私にはその人を裁く権利はない」と公言した。30日付伯字紙が報じている。
この発言は法王がリオからローマへ戻る飛行機の中で、約70人の報道陣との対話の席で行われた。質問は事前に法王に知らされないまま行われたが、特に禁止事項もなく、法王もリラックスした状態で質問に答えた。
質問はカトリック教会内で問題になっている汚職問題や、教会内における女性聖職者の問題、離婚、中絶などに及んだが、もっとも注目を集めたのは同性愛者についての発言だった。
同性愛者への質問は、同性愛者として知られた枢機卿(高位の司祭)で、法王がローマ教皇庁の宗教事業協会(通称バチカン銀行)総裁に指名したバチスタ・マリオ・リッカ氏に話が及んだときだった。法王は「信仰者が罪を告白すれば、神はその人の罪を赦す。同性愛的傾向を持っていても、神を信じて正しく歩もうとするならば、私にはその人たちのことは裁けない」とした。さらに「同性愛的な欲求を持つとかそういう対象に惹かれたという理由で差別されるべきではなく、社会の一員として受けいれられるべきだ」と語った。
その一方で、リッカ氏がバチカン内で起こしたとされる同性愛のロビー活動に対しては否定的な意見を語った。法王は、この事件の問題は同性愛そのものではないとし、ロビー活動そのものが持つ強欲的で政治的な性格を問題視している。
法王は同性愛婚や妊娠中絶の問題には「カトリック教会の教理指導書に定義してある通り」としたが、離婚問題に関しては「教会は母であり、常に赦しを与えるもの」と語った上で、「婚姻の無効化の問題については見直しの必要がある」と語った。
慎重な物言いも見られたものの、今回のこのフランシスコ法王の発言はブラジルの同性愛活動家に好意的に受け止められた。ブラジル同性・両性愛者・性転換者協会(ABGLT)のカルロス・マグノ・シルヴァ・フォンセッカ会長は「法王が同性愛者を攻撃しなかったというだけで、私たちには大きな助けだ。これは教会が立場を見直しはじめたしるしで、重要な一歩前進だ」と語った。同氏によると、ジョアン・パウロ2世やベネディクト16世といった歴代法王は、同性愛者たちに対し明らかに反対する立場だったという。
また、今回の法王発言は、「同性愛者を病気として治療することができる」などの法案を提案し社会的な物議を醸していた、ペンテコステ系の福音派主体のブラジル下院人権委員会への風当たりを強いものにしそうだ。