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不妊治療天国ブラジル=(3)=卵子提供者少ない日系人=東洋系同士でも人種間の壁

ニッケイ新聞 2013年8月6日

IPGOのアマンダ医師

IPGOのアマンダ医師

 そんな中、多くの日本女性が卵子を求めて海外へ渡り始めている。
 卵子の売買が合法的に行われている米国では、この3年間で日本人の希望者が4倍に増えた。治療費が米国の4分の1程度のタイへも、毎年数百万人が渡航しているとみられている(NHKクローズアップ現代2013年1月10日放送)。
 ブラジルは距離的な制約は大きいが、片島さんは「海外最大の日系社会があるので、潜在的な卵子提供者は多い」と言う。実際に、日本から卵子提供を求めてやってくる日本人もいる。
 まだ当地に卵子バンクはないが、マルシア医師によれば「大半の病院が施設内に卵子バンクを持っている。卵子の寄付を随時受付けているし、不妊治療を受けた後、残った卵子を寄付することもできる」。
 卵子提供者の条件は、日本と同様35歳以下で健康体であること。匿名が原則のため、親族による卵子提供はできず、金銭の授受も禁じられている。バンクは50歳以上の女性でも医療審議会(CFM)の許可があれば利用できるし、同性愛者、独身、事実婚カップルの利用も認められているなど有利な点も多い。
 また、同審議会は先月から、卵子の提供者不足と金銭的な負担軽減を効果的に解決するため、卵子を提供すれば無料で治療を受けられる制度を推進し始めた。つまり、不妊治療をうける女性同士が助け合うことで互いの負担を軽減する相互補助システムだ。
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 サンパウロ州産婦人科学インスティチュート生殖医療センター(IPGO、96年設立)では、この相互補助制度を使った「卵子提供プログラム」を実施し、卵子確保に取り組んでいる。しかも、これは日系人女性のみ対象としたものだ。
 同センターを訪ね、アマンダ・アルヴァレス医師(35)に詳しい話を聞いたところ、「このキャンペーンは、提供者が極端に少ない日系人の卵子を募るために5年前に始めたもの」だという。
 同院で顕微授精を受ける場合の費用は、医薬品代込みで1万8千〜2万レアル。しかし、卵子を提供すれば治療費が無料になり、医薬品代のみの1万3千レまで費用を抑えることができる。
 卵子を求める日系人数の増加をうけ、キャンペーンのほか、リベルダーデ区で講演をしたり日系人医師に呼びかけたりもしてきたが、「反応はいいとは言えない。少しは提供者も増えたけど、まだまだ」と明かす。4年間卵子提供を待ち続け、諦めた女性もいた。
 「文化的な理由からか、日系人は卵子提供への抵抗感が強いみたい。ブラジル人の夫を持つ場合は、結構提供してくれる。でも、ブラジルの女性なら月に15人ほど提供者が現れるのに、日系人は年に10人もいないので、やはり少ない」。
 しかし、こうした状況は日系人だけではないという。同医師によれば「卵子が足りないのは東洋人全体に言えること。韓国人や中国人の卵子も不足している」。さらに「日系人も中国人も韓国人も、みな外見的には似ているけど、どうしてもほかに選択肢がない時以外は、お互いの卵子は使いたがらない」との文化的事情が、卵子提供を受けるチャンスをさらに狭めている。〃人種のるつぼ〃ブラジルとはいうが、当地生まれの世代になっても、実はまだ東洋人の人種間の壁は厚いようだ。(つづく、児島阿佐美記者)