ニッケイ新聞 2013年8月9日
父の日を前に、グローボ局が父への思いを綴った文を募集している。
今回はその中から、1998年に起きた交通事故の時、理学療法士の父親がとって返し、適切な助言をしてくれたおかげで、脊椎損傷による全身麻痺を免れたシモネ・ペナさん(36)の話を紹介しよう。
ミナス・ジェライス州ジュイス・デ・フォーラに住むシモネさんは1998年、祖父の車に同乗して旅行から帰ってくる途中、リオ・ノーヴェとジュイス・デ・フォーラを結ぶ州道353号線のカーブを飛び出した車が横転し、18メートルの崖を転がり落ちるという事故に巻き込まれた。
別の車で前を走っていた父親は、バックミラーを見ていて、シモネさん達の車が視界から消えた事に気づき、現場に急行。車から飛び出して、18メートルの崖を駆け下りた。
祖父の車を見つけた父親は、とりあえずの救急処置を施した後に消防に通報、救助を求めた。
シモネさんは車体に挟まれ、身動きが出来ない状態になっていたが、救急隊が駆けつけた時、救急車に同乗しているはずの医師に見てもらい、救出方法を判断してもらうよう要求したのがシモネさんの父親だった。
救急隊員らは最初、頚椎を支える防具をつけ、毛布で包んで救出するつもりだったが、父親はその方法だと脊椎を損傷する可能性が強いと判断した。最終的な救出法は現場に下りてきた医師の判断で決まり、シモネさんは、体の下には差し込まれた木の板によって体全体を支え、脊椎に無理のかからない状態を作り出した上で救出された。
病院での検査後、神経外科医から「君のお父さんが適切な判断をしていなかったら、全身麻痺を起こしていたよ」と言われたシモネさんは、誇りと感謝の思いを込め、「あの時、父親が現場に居なかったら、この話をコンピューターに打ち込む事さえ出来なかったはず」と証ししている。(8日付グローボ局サイトより)