ニッケイ新聞 2013年8月10日
コロニアーいやサンパウロにもすっかり馴染み深くなった「富有柿」の古里は岐阜県大垣市の近辺らしいが、あの柿色に熟した果実は甘く香りも素晴らしい。まさしく「秋の味」であり、サンパウロをご訪問された今上陛下と美智子皇后さまも「美味しい」といいながら「富有柿」の味を楽しまれたと仄聞している。しかも、ここの富有柿は糖度が高く本場よりも美味の説があるほどの—完成品らしい▼あの美濃の国は志野や織部など焼き物の産地だけれども、農業もしっかりと根付き、隣接する名古屋市場への野菜やトマト栽培も活発である。こうした現状を踏まえ岐阜県庁は農業高校の生徒らをブラジルに派遣し農場視察と研修を実施している。先月27日の本紙の社会面でも報道しているが、今年で35回を迎えた派遣団は、帰国後も農業の先端に立ち、多くの困難と闘いながら実績を積み重ねている▼先ごろ、来聖した高校生らの調査目的や意識は極めて高い。岐阜農林高校2年の大井樹里さんは、実家が乳汁100頭飼育の畜産農家だが、本人は「家業を継ぎたい」とし、乳牛と飼料作物について学びたいーと意欲満々なのである。将来は農業経営をと燃える渡辺翔也君もいる。こんな若者らが、400人ほど母県で活躍しており、先頃は「岐阜県人移民100周年」のお祝いにと寄付金を託してきたのはとてもいい話であり嬉しい。▼だが—こんな農高生への支援も少なくなり岐阜と兵庫両県だけになったのは何とも淋しい。食糧自給率が4割だけになった日本は「土に生きる力」を今こそ踏ん張って回復しなくてはならないのにー。(遯)