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BMWがマラクジャの町に=ラ米初の工場建設で大変化=先住民達は無視された?

ニッケイ新聞 2013年8月14日

 サンタカタリーナ州北部にある人口2万4千人強の小さな町アラクアリは、〃マラクジャ(パッションフルーツ)の町〃として知られているが、今年、世界的な多国籍企業であるBMWの工場建設開始で町の様子が一変した。
 BMWがアラクアリにラテンアメリカ初の生産拠点に選んだ事は昨年、ジウマ大統領も参加した大統領府での公聴会で公表された。公聴会の場では「なぜ、アラクアリなのか」という質問も出ており、BMW社の生産部門担当の副社長、ブラジルでの生産拠点建設の責任者でもあるゲラルド・デゲン氏が、「アラクアリは国道101号線と280号線に囲まれ、遠からぬ所に五つの港と空港一つがある、地の利に恵まれた場所である」と回答した。デゲン氏はドイツ生まれで、2カ月前、家族と共に、サンタカタリーナ州ジョインヴィーレ市に引っ越してきた。
 BMWは同市内に50万平方メートルの土地を得、既に新工場の建設工事を開始。現場に詰め掛けた建築作業員200人は、2014年9月からの生産開始を目指し、24時間体制で工事を行っている。また、最初の販売店も契約済みで、今年中にジョインヴィーレ市内に店を開ける予定だ。
 7月初めまではホテル一つなかったアラクアリには今、BMW進出と聞いて賭けに出たルドゥジエロ&クラウデッテ・ゼニラ夫妻が建てた、同市一高い、5階建てホテルがその偉容を現し、来月の開業を待っている。
 また、金属工の採用・訓練プログラムも動き始め、アラクアリや周辺の町の住民に対する技能訓練も行われる予定だ。8月にはフォルサ・シンジカルと繋がりのある金属工労組が活動を始めた。
 BMWは新工場導入のため、アラクアリの年間GDP(国内総生産)の40%に相当する5億レアルの投資を約束。最近の町の話題はBMW一色で、町唯一のタクシー運転手のサムエルさんは、甥が金属工として採用される事を望んでおり、商店主のアデジャニウソンさんは、22歳と18歳の息子2人が新工場の従業員として働ければと願ってやまない。
 だが、町の実態を無視した工場誘致と市長を批判する人もいる。「ジョインヴィーレやクリチバ、サンパウロといった町からも人が移って来れば、アラクアリがアラクアリじゃなくなってしまう」とか、「経済発展は大切だけど、穏やかで町民が皆顔見知り、親達から受け継いだ社会的、文化的遺産もある町の特性を失ってはならない」との声もある。でも、BMWの進出で「道路の舗装、病院や産院建設といった長年の夢も叶い、住民の生活水準が上がる」と考える市長らの耳には届いていない。
 工場建設などで生じた変化は、不動産価格急騰など、様々なところで実感され始めたが、建設現場から1キロの所に住むグアラニ族のカイラー・トクンボー酋長は、「誰一人、わしらのところには来なかったし、勝手に建設を始めた。わしら先住民は、奴らを追い出したり工事を中止させたりする手立てなんて持ってない」と胸中の不満をぶちまけている。同市内には先住民の居住区が九つあり、グアラニ族を頭とする先住民は644家族、約2500人。為政者達は、BMW進出の朗報に、人口の10%にあたる先住民の存在をすっかり忘れてしまったようだ。(11日付エスタード紙より)