ニッケイ新聞 2013年8月22日
【既報関連】米国の金融政策変更の可能性などが原因で世界的にドル高が進み、ブラジルでも、中銀が20日に60億ドルの介入を行って一時的に1ドル=2・40レアルを割る状態を作り出したが、21日は再びドル値上がりと21日付伯字紙や各紙サイトが報じた。レアルの価値は今年だけで約17%下がっており、様々な影響が出始めている。
このところのドル高傾向は、米国中銀に当たる連邦準備制度理事会(FRB)が金融緩和政策を変更し、国債の買い入れを減らすとの懸念から、米国債を売る動きが強まった事などが原因だ。
FRBの金融緩和は米国経済刺激のために導入され、月850億ドルという大量のドル投入は、新興国を中心にドル安を招いた。だが最近は、米国の景気回復で量的緩和縮小が噂されていた。
量的緩和策変更の可能性は、7月にバーナンキ議長が量的緩和を継続する姿勢を示した事で一時的に薄れたが、その後、来年1月に退任する同議長の後任人事も見通し、早ければ9月に変更との見方が広がり、19日にはアジア新興国などの為替や株の急落も起きた。
ブラジルでは、中銀が19日に約40億ドルの介入を行ったが1ドル=2・42レアルを記録。20日は約60億ドルの介入を行い、1ドル=2・39レアルで終わった。
為替の動向にはFRB以外の要因も働くが、21日の為替市場は再びドル高に転じ、中銀が介入したが、FRBの議事録が発表された午後は一段とドル高が進み、1ドル=2・4512レアルで引けた。市場では、FRBの政策変更が近いと判断しており、中銀がより積極的な介入を行うと見ている。
ギド・マンテガ財相は20日、中銀は適切な介入を行ったと賞賛。内外の投資家には「為替で稼ごうとすると痛い目を見る」との警告も発した。
ドル高はドル建ての負債を負う企業には負担増も強いており、ドル価が8・23%上昇した6月30日〜8月19日は上場企業104社の利益が44%減少したという。ブラジルが抱えるドル建て負債は6月13日現在で3217億ドルに上り、利子の支払額も612億ドルに拡大。6月12日のドルでの国内総生産(GDP)は2兆3700億ドルだったが、6月13日は2兆2900億ドルに目減りした。
自動車や電機・電子機器のように部品の一部を輸入している製品や輸入品の価格調整は避けられない状況で、航空会社は運賃値上げを避けるため、連邦政府に燃料などの課税率引下げを要求する一方で、ドルでの運賃を値下げした。ドル高で小麦価格が上昇し、パンやビスケット、麺などが値上がりした事は、庶民の懐を直撃している。
今年のドル価は今月20日までに17・07%上昇しており、政府の経済予測なども狂わせている。市場では短期的には中銀が1ドル=2・30レアルを目標に介入を続けるがそれ以上は下がらず、向こう1年の間に2・40レアルに戻るとの見方も出ている。